June, 5, 2024, Massachusetts--マサチューセッツ大学アマースト校(University of Massachusetts Amherst)のエンジニアが率いる研究グループは、バイオフィルムが水中環境の表面で成長するのを98%削減できる紫外線(UV)放射ガラスを開発したと、Biofilm誌に報告している。
バイオフィルムは、濡れた表面で成長する様々な種類の微生物のヌルヌルした層である。「洗面台を見下ろして、その内側に触れると、そのヌルヌルした物質がバイオフィルムだ」と、UMass Amherstの土木・環境工学の助教授で、論文の責任著者であるMariana Lanzarini-Lopesは説明している。
バイオフィルムは、水中アプリケーションにとって重要な問題である。米国海軍は、バイオフィルムの費用を年間1億8,000万ドルから2億6,000万ドルと見積もっている。すべての水中表面でのバイオフィルムの成長は、船の抗力とそれに続く燃料使用量を増加させるだけでなく、船や海洋機器の腐食による損傷も増加させる。
また、バイオフィルムは、透明度に依存するカメラやその他のセンシングデバイスに使用される窓を曇らせたり、外来種を海を越えて輸送したりすることもできる。
バイオフィルム対処への現在のソリューションは、生物を殺す殺生物性コーティングや、バイオフィルムの付着を最初に防ぐための焦げ付き防止コーティングなどの化学物質に依存している。しかし、これらの方法は生態系に悪影響を及ぼし、短期間しか続かない可能性がある。
これらの化学的方法の代替として、UMass Amherstのチームは、米国海軍研究局(ONR)からの資金提供を受けて、UVC放射を使用してバイオフィルム耐性ガラスを開発した。Lopes教授の研究室では、UV側発光光ファイバが、医療機器(内視鏡、カテーテル、人工呼吸器など)、家庭用機器(コーヒーメーカー、冷蔵庫)、貯水・配水システム(パイプ、膀胱、膜)などの小さなチャネルにUVC放射を拡散し、病原体を不活化し、表面での細菌の増殖を防ぐことができることをすでに実証している。
「表面、空気、水を消毒するためのUVについては、多くの人が知っている。特にSARS-CoV-2ウイルスの消毒に効果があったため、人々はより多く使用し始めた」(Lopes)。
とは言え、水中環境では、ガラスにUV光を当てるだけでは不十分である。「従来の光源では、表面に光を均一に分配することはできない」と、Lopes研究室のポスドク研究員、研究の筆頭著者Leila Alidokhtは話している。光源から離れるにつれて光が弱くなり、広い表面積をカバーすることが難しくなる。UVは、周囲の水の濁り具合によっても妨害される可能性がある。
UV光の偏在は、バイオフィルムを形成する微生物に拠り所を与え、表面全体が脆弱なままになる:「バイオフィルムを表面の一部に付着できると、それは他の部分に広がる可能性がある」(Leila Alidokht)。
チームのソリューションは、ガラス上のシリカナノ粒子コーティングである。「UV LEDはガラスの断面からつながっている。UV光がガラスに入ると、ガラスの内側から外側にUVを散乱させる」(Alidokht)。この光散乱ナノ粒子を使用する。シリカはUV光を吸収しない。UV波はナノ粒子に跳ね返り、継続してガラス内部を通り抜け、ガラス表面を均一に「光る」ようにする。
それをテストするために、研究チームはフロリダ工科大学および海軍と協力して、このUV発光ガラスをフロリダ州ポートカナベラルの海域に20日間沈めた。未処理のガラスと比較して、このガラスは目に見えるバイオフィルムの成長を98%抑制した。
「外部からのUV照射技術とは対照的に、UVを発するガラスは、目的の表面で直接バイオフィルムの形成を抑制する。表面自体がUVC光源として機能する」(Alidokht)。
同氏によると、この発見が多様な消毒用途への扉を開くことになる。「開発された技術は、船舶の窓、浮遊球、係留ブイ、海洋学、農業、水処理用途のカメラレンズやセンサなどの透明な表面の消毒に使用できる」(Alidokht)。
チームは、この発見により暫定特許を取得した。
このガラスがバイオフィルムの形成(生物付着)に効果的であることが証明された今、チームは、長期的なアプリケーションのテスト、環境への影響の評価、より大きな表面積の作成など、発見を最適化することに取り組んでいる。
もうひとつの未来の探求の道は、「カメラのレンズに付着したバイオフィルムの防止にも挑戦している」(Lopes)。(水中カメラの)配備時間の長さの主な阻害要因は生物付着なので、生物付着の速度を減らすことができれば、このすべての光学機器を配備する時間を増やすことができる。