Science/Research 詳細

移動中にリアルタイムで血流計測するウェアラブル技術

March, 29, 2024, Washington--中国の研究者は、皮膚の血管の高解像度イメージングのための光音響イメージングウォッチを開発した。
ウェアラブルデバイスは、心拍数、血圧、酸素飽和度など、人の心臓がどれだけうまく機能しているかを示すことができる血行動態指標を監視する非侵襲的な方法を提供することができる。

「光音響イメージングは血行動態の変動に非常に敏感だが、イメージングインタフェースの小型化と最適化が困難なため、ウェアラブル光音響デバイスの開発は限られている」と、中国の南方科技大学の研究チームリーダー、Lei Xiは話している。「われわれの知る限り、これはヘルスケアアプリケーションに適した最初の光音響ウェアラブルデバイスである。」

Optics Lettersで、研究チームは、イメージングインタフェースを備えた時計、ハンドヘルドコンピュータ、レーザと電源を収納するバックパックで構成される新しいシステムについて説明している。ボランティアが自由に行動する実験では、歩行などの様々な活動中の血流変化を観察するために使用できることが示された。

「われわれが開発したような小型ウェアラブル画像システムは、地域の保健センタで病気の予備診断や、病院内の血液循環に関連するパラメータの長期モニタリングに使用できる可能性があり、様々な疾患の治療に役立つ貴重な洞察を提供する。さらなる開発により、このタイプのシステムは、乾癬や黒色腫などの皮膚疾患の早期発見や、火傷の分析にも役立てられる」(Xi)。

ウェアラブルイメージャの作成
光音響イメージングは、構造物内の光吸収によって生じる光誘起音波を測定することにより画像を形成するラベルフリー技術。光音響信号の強度と分布を分析することで、様々な疾患によって変化する微小血管の機能的および構造的特性に関する洞察が得られる。光音響イメージングは、まだ主に研究ツールであるが、ガン、血管、皮膚科のイメージングなどの分野で臨床アプリケーションが見つかり始めている。

通常、かさばる機器を、移動中に装着できるものに変えるために、研究チームは、コンパクトなパルスレーザ、タイトなファイバベースの光パス、および重さ7kgのバックパックに収納された統合電子システムをベースにしたコンパクトな光学分解能光音響顕微鏡システムを開発した。また、画像を保存するためのハンドヘルドデバイスを設計し、調整可能な焦点面と画像をリアルタイムで表示するための画面表示を備えた小型の時計タイプのイメージングインタフェースを作成した。

研究チームは、装着者が自由に動き回っている間にイメージングに使用できるようにシステムを設計した。また、皮膚などの多層構造のイメージングに必要な適応可能なレーザフォーカスも備えている。光音響イメージングシステムは、横方向の分解能8.7µm、これは皮膚のほとんどの微小血管解像に十分であり、最大視野は直径約3mmで、微小血管の詳細を捉えるのに十分である。

移動中の血液の追跡
研究チームは、腕時計のフォーカスシフト機能と、着用者が歩行中や腕への血流を一時的に遮断するためにカフを使用した場合など、様々な条件下で長時間にわたる血流の変化を検出するシステムの能力を評価するために、ボランティアとともにデバイスをテスした。これらのテストでは、システムが使いやすく、コンパクトで、自由に移動できるほど安定していることが示された。

研究チームは現在、より小型で繰り返し率の高いレーザ光源を採用したシステムの実現に取り組んでいる。これにより、システムの小型化・軽量化が図られるとともに、安全性と時間分解能が向上する。「最新のレーザダイオード技術と電子情報技術の急速な発展を考えると、バックパックを必要としない、より高度でインテリジェントな光音響時計を開発することは十分に実現可能なはずだ」とXiはコメントしている。

研究チームは、長時間にわたって、ランニングやジャンプなどのより激しい条件下でのファイバ結合光路の安定性を確保することにも取り組んでいる。また、マルチスペクトル照明を取り入れることで、酸素飽和度や血流速度などの生理学的パラメータの取得や、血管数や体積などのパラメータの定量的評価が可能になると考えている。これらの機能は、ガンや心血管疾患などの疾患の早期診断をサポートするのに役立つ。