March, 21, 2024, Jena--イェーナの研究チームが光ファイバのAIシステムを開発した。
ライプニッツ光技術研究所(ライプニッツIPHT)とイェーナのフリードリヒ・シラー大学(Friedrich Schiller University)の研究者は、国際的なチームとともに、将来のAIシステムの高エネルギー需要を大幅に削減できる新技術を開発した。
このイノベーションは、人間の脳のニューラルネットワーク(神経網)に触発された光をニューロンコンピューティングに利用する。より効率的なデータ処理が約束されるだけでなく、現在の方法よりも何倍も高速になり、エネルギー消費量も大幅に削減される。学術誌「Advanced Science」に掲載されたチームの研究は、環境に優しいAIアプリケーションのための新しい道、およびコンピュータレス診断とインテリジェント顕微鏡法の進歩を紹介している。
人工知能(AI)は、ガンの診断から新しい抗生物質の開発に至るまで、バイオテクノロジーや医療処置を進歩させる上で極めて重要。とは言え、大規模なAIシステムのエコロジカルフットプリントは相当なものである。たとえば、ChatGPT-3 のような広範な言語モデルのトレーニングには、数GWhのエネルギーが必要であり、これは平均的な原子力発電所をフル稼働で数時間稼働させるのに十分なエネルギーである。
Mario Chemnitz教授知能フォトニックシステム学分野 助教授外部リンクイェーナのフリードリッヒ・シラー大学とイェーナのライプニッツIPHTのDr Bennet Fischerは、国際チームと共同で、大規模な電子インフラを必要とせず、エネルギー効率の高いコンピューティングシステムを開発するための革新的な方法を考案した。光ファイバ内の光波のユニークな相互作用を利用して、高度な人工学習システムを構築する。
何千ものコンポーネントではなく単一のファイバ
何千もの電子部品を含むコンピュータチップに依存する従来システムとは異なり、そのシステムは単一の光ファイバを使用する。このファイバは、様々なニューラルネットワークのタスクを光の速度で実行できる。「われわれは、1本の光ファイバを利用して、多数のニューラルネットワークの計算能力を模倣している。光の持つユニークな物性を活用することで、将来的には膨大なデータを高速かつ効率的に処理することが可能になる」と、Mario Chemitzは説明している。同氏は、LeibnizIPHTのジュニア研究グループ「Smart Photonics」のリーダーでもある。
そのメカニズムを掘り下げると、光の周波数が混ざり合うことで情報伝達がどのように行われるかが明らかになる:画像のピクセル値であろうと、オーディオトラックの周波数成分であろうと、データは超短光パルスのカラーチャンネルにエンコードされる。これらのパルスは、ファイバを介して情報を伝送し、様々な組み合わせ、増幅、または減衰を受ける。ファイバの出力で新しい色の組み合わせが出現することで、データタイプやコンテキストの予測が可能になる。たとえば、特定のカラーチャンネルは、画像内の目に見えるオブジェクトや、音声内の病気の兆候を示すことができる。
機械学習の代表的な例は、何千もの手書き文字から異なる数字を識別することである。ケベック州国立科学研究所(INRS)のMario Chemnitz、Bennet Fischerらは、手書きの数字の画像を光信号にエンコードし、光ファイバを介して分類する技術を利用した。ファイバの末端での色組成の変化は、各デジットの「フィンガープリント」である固有のカラースペクトルを形成する。トレーニング後、システムはエネルギー消費を大幅に削減し、新しい手書き数字を分析および認識できる。
音声サンプルから COVID-19 を認識
「簡単に言うと、ピクセル値は、赤が強くなったり青が少なかったりするなど、様々な強度の原色に変換される。ファイバ内では、これらの原色が混ざり合って、虹のフルスペクトルを作り出している。たとえば、混合された紫の色合いは、システムによって処理されるデータについて多くを明らかにする」(Mario Chemnitz)。
また、この手法を音声サンプルを用いたCOVID-19感染の診断パイロット研究に応用し、これまでで最高のデジタルシステムを凌駕する検出率を達成した。
「われわれは、光ファイバ内の光波のこのような活気に満ちた相互作用が、追加のインテリジェントソフトウェアなしで複雑な情報を直接分類できることを実証した最初の研究者である」とMario Chemnitzはコメントしている。