March, 14, 2024, 大阪--大阪公立大学大学院 工学研究科の野島周人大学院生、渋田昌弘准教授、金大貴教授らと大阪大学の共同研究グループは、グラファイト基板上に吸着させたトリフェニレン(TP)分子薄膜の電子状態と表面構造を、2光子光電子分光法、走査型トンネル顕微鏡および低速電子回折を用いて観測した。
その結果、TP分子は基板に対して斜めに吸着する特殊な構造を持つことが分かり、光を照射した際に基板からTP分子に注入された電子と、分子薄膜内で光励起された電子との両方を、一つの試料で同時に観測することに成功した。また、TP分子のように基板に対して分子が斜めに吸着する特殊な構造では、分子1層のみの薄膜でも強い発光が観測できることを明らかにした。これらの成果は、新たな発光材料の開発や既存材料のさらなる機能向上において重要な知見となることが期待される。
有機発光ダイオードや有機太陽電池など、低コスト、軽量、フレキシブルな有機デバイスでは、有機分子薄膜と基板材料との間の電子移動がその機能を支配するため、それらの界面での電子状態を知ることが重要である。
研究成果は、2024年1月24日に、国際学術誌「The Journal of Physical Chemistry C」にオンライン掲載された。
「研究成果から、電子状態の見え方は分子の基板への吸着様式と電子物性に密接に関与していることがわかった。つまり、分子の種類だけではなく、その並び方をきちんと制御したデバイスを作らないと機能を十分に引き出せないということだ。2光子光電子分光法という電子状態の評価手法はまだ新しく、測定に時間がかかったり、電子状態がうまく観測できないという悩みはあるが、基礎研究の立場から応用に向けた機能設計指針を示せたことが嬉しく思う(野島 周人大学院生)」。
(詳細は、https://www.omu.ac.jp)