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複数のラセン状流路を持つ ポリマ製ファイバ開発

February, 29, 2024, 仙台/沖縄--マイクロ流体技術はマイクロリットルスケールの流体を操作し応用する手法で、生命科学や化学、材料工学など多岐に渡る分野で利用されている。その中でも慣性力を利用して細胞や粒子のサイズによって分離したり混合したりするラセン型のマイクロ流路は、低コストで運用が容易なため、研究や実用現場で広く応用されている。

従来のマイクロ流体デバイスの多くは平面基板上に半導体製造技術のリソグラフィによって作製されている。しかし流路形状を細かく制御できる反面、材料の選択制限や製造工程の複雑さ、平面構造に限定されるといった課題が存在する。

東北大学学際科学フロンティア研究所の郭媛元准教授と工学部学部生の加藤駿典(学際研ジュニアリサーチャー)、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のAmy Q.Shen教授とDaniel W. Carlson(当時研究員)で構成された学際的な研究チームは、これらの課題を解決するために、光通信ファイバの製造技術である熱延伸法を改良し、卓上型回転熱延伸法(mini-rTDP)を開発した。この新たな手法を利用して、三次元ラセン型微小流路を持つポリマファイバの開発に成功した。

研究成果は、学術誌 Microsystems and Nanoengineering に2024年1月22日付で掲載された。

発表のポイント
・細胞や粒子の混合や分離に利用する目的の三次元ラセン流路からなる微小遠心機を、熱延伸法を用いて容易に製造できる手法を確立した。

・数値流体力学解析に基づいたシミュレーションと三次元流速分布計測実験において、ともにディーン渦の形成を確認し、実用化できる可能性を示した。

・新たな流体の統合制御が可能となることで、革新的な生体分析方法への道が拓けると期待される。