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超薄型な可変焦点レンズに偏光分離機能を統合

February, 21, 2024, 東京--東京農工大学大学院の羽田充利氏(専門職学位課程1年)と阿出川彪氏(2023年3月博士前期課程修了)、青木活真氏(博士前期課程2年)、早稲田大学理工学術院の池沢聡研究院講師、東京農工大学大学院の岩見健太郎准教授は、メタサーフェスを利用して、光通信波長帯において偏光を分離しながら焦点距離を調整可能なメタレンズを実現した。
この成果は、高速かつ大容量な次世代の光通信技術への応用が期待される。

今回、光通信波長帯である波長1550nmで動作する偏光分離機能を持つ可変焦点メタレンズを開発した。これは、直交する2つの直線偏光成分を分離して異なる位置に集光させつつ、その焦点距離を変化させることができる。
設計ではまず初めに、可変焦点メタレンズであるAlvarezメタレンズの位相分布を改変し、光軸外に集光する可変焦点メタレンズの位相分布を導出した。メタアトムの断面構造を長方形として垂直・水平直交偏光に対する位相遅延量を独立して制御し、集光位置の異なる位相分布を割り当てることで所望の機能を実現した。設計したメタレンズは、東京大学微細加工拠点の電子線描画装置、反応性イオンエッチング装置を用いて製作し、設計波長の光源にてその機能を確認した。

今後の展開
社会の情報化に伴い、高速かつ大容量で安全な光通信技術への需要が高まっている。自由空間光通信は高速で秘匿性も高く、光ファイバの敷設が不要で設置コストも低いため次世代の光無線通信技術として期待されている。空間中を伝搬する信号光は大気の揺らぎなどの影響を受けるため、受信装置においてはこれを追尾して検出器に誘導する調芯が必要になる。また伝送容量の増大のためには、異なる情報を持つ偏光を多重化して伝送し、受信部で分離する偏光多重技術が使われている。
この研究で開発したメタレンズを自由空間光通信の受信器に用いることで、調芯と偏光分離の二つの機能を小型の素子で担うことが可能になる。さらにメタレンズは半導体の製造プロセスにより大量生産することが可能であり、次世代の光通信設備の簡素化やコスト削減に貢献できると期待できる。

研究成果は Optica (旧米国光学会 OSA) 発行の Optics Express(IF=3.833, 電子版 2024 年 2月8日付)に掲載されました。
論文タイトル:Polarization-Separating Alvarez Metalens
DOI:10.1364/OE.516853

(詳細は、https://www.tuat.ac.jp)