January, 31, 2024, 大阪--大阪大学大学院などの研究チームは、光照射により発生する力(光圧)を計る顕微鏡(光誘起力顕微鏡)を用いて、単一分子の中で電子が複雑に歪む様子を1ナノメートル(nm)以下の分解能で画像化することに世界で初めて成功した。
基板や配列をデザインして一つ一つの分子を積み上げ新しい機能を持つ物質を創り出す技術は、将来の省エネルギー・持続型社会の創造に不可欠な技術である。しかし、配列構造中など、多様な環境中にある分子一つ一つの性質は、それが単独であるときのものとは通常著しく異なる。周囲との相互作用の結果、分子の性質を決める電子が移動したり、電子雲が強く歪んだりするので、それを理解した上での材料設計が必須となる。
今回研究チームは、層状に積まれた単一分子の一つ一つを、光が誘起する力を用いて観測した。その結果、分子内の電子雲が歪み、電荷分布が分子サイズより細かい複雑な構造を持つ様子を原子分解能に迫る光圧画像で確認した。また通常の光では吸収せず透明に見えてしまう波長での像が観測できたことも特徴である。機能性集積分子材料の設計・評価のための新しい基盤技術として期待される成果である。
研究成果は、2023年12月29日(金)、米国化学会の学術誌「ACS Nano」のArticlesオンライン速報版で公開された。
研究チーム
大阪大学大学院工学研究科 菅原康弘教授、山本達也(研究当時:博士後期課程)、大阪大学大学院基礎工学研究科 石原一教授、大阪公立大学大学院工学研究科 余越伸彦准教授、大阪産業技術研究所 山根秀勝研究員
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)