October, 30, 2023, Lausann--スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究者は、最先端のイメージング技術を使用して、主な原因であるタンパク質α-シヌクレインが細胞代謝をどのように破壊するかを研究することにより、パーキンソン病の進行に光を当てている。
パーキンソン病は、脳内の特定の種類のニューロンの劣化をもたらし、多くの運動症状および非運動症状を引き起こす複雑な神経変性疾患である。現在、世界で1000万人以上が、パーキンソン病を患っていると推定されている。これは、アルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患である。その数は、パーキンソン病のパンデミックと呼ばれるもので、2040年までに最大1400万人に膨れ上がると予想されている。
パーキンソン病の重要事象の1つは、ニューロン内のα-シヌクレインと呼ばれるタンパク質の蓄積である。その蓄積は細胞の正常な機能を破壊し、パーキンソン病および他の障害の症状を引き起こし、レビー小体と呼ばれる凝集体に進行する。
新しい研究では、EPFLの2つのラボの研究者が専門知識を組み合わせて、α-シヌクレインがニューロン内の代謝プロセスをどのように破壊するかを調査した。この研究は、ベルタレッリの遺伝子治療プラットフォーム(Bertarelli Platform for Gene Therapy of Bernard Schneider)とEPFLのAnders Meibomグループとの間の真に学際的なコラボレーションであり、EPFLの生体電子顕微鏡コア施設(Bioelectron Microscopy Core Facility)の支援を受けている。
研究チームは、NanoSIMS(ナノスケール二次イオン質量分析)と呼ばれる分析機器を含む最先端のイメージング技術を使用した。NanoSIMSは、高い空間分解能(50-150 nm)、高分解能質量分析、および高い分析感度を組み合わせた「イオンマイクロプローブ」であり、代謝回転の細胞内マップを非常に高感度で生成できる。EPFLのMeibom研究室は、多くの生態学的および地質学的研究にNanoSIMSを使用したことで有名である。
この研究では、研究チームはNanoSIMSと安定同位体標識法(SIL)を組み合わせて、組織内の同位体変動を高解像度で視覚化し、個々の細胞コンパートメントと細胞小器官の代謝活動に関する洞察を提供した。チームはこれを電子顕微鏡法と組み合わせて、生物学的サンプルから、より多くの情報を「見る」ことができた。
パーキンソン病をモデル化するために、チームは、脳の一方の半球でヒトα-シヌクレインを過剰発現させ、もう一方の半球を対照として健康にする遺伝子組み換えラットを使用した。α-シヌクレインを過剰発現するニューロンを対照半球のニューロンと比較することにより、研究者らは、炭素分子がニューロン内に取り込まれ、処理される方法に大きな変化があることを明らかにした。
最も注目すべき発見の1つは、ニューロン内の炭素の代謝回転に対するα-シヌクレインの効果だった。α-シヌクレインを過剰発現するニューロンは、高分子の全体的な代謝回転の増加を示し、α-シヌクレインの蓄積がこれらの細胞に対する代謝要求の増加につながる可能性があることを示唆している。
この研究では、核や細胞質などの異なる細胞コンパートメント間の炭素分布の変化も確認した。これは、α-シヌクレインとDNAおよびヒストンとの相互作用の影響を受ける可能性がある。
α-シヌクレインによって引き起こされる代謝破壊は、特定の細胞小器官にも影響を与えると見える:例えば、ミトコンドリアは異常な炭素取り込みと代謝回転パターンを示し、これはα-シヌクレインがミトコンドリア機能を損なうことを示す以前の研究と一致している。同様に、細胞の輸送とコミュニケーションを担当するゴルジ(Golgi)装置は、α-シヌクレインがオルガネラ間コミュニケーションを妨害することによって引き起こされた可能性が高い代謝障害を示した。
「この研究は、細胞内レベルで前例のない解像度で脳の代謝変化を明らかにするNanoSIMS技術の可能性を示している。これにより、われわれは、パーキンソン病に直接関連するメカニズムであるα-シヌクレイン蓄積の結果として脆弱なニューロンで発生する初期の病理学的変化を研究するためのツールが得られる」(Bernard Schneider)。