Science/Research 詳細

喘息吸入器から肺までの薬剤粒子の流れをレーザでモニタ

November, 19, 2014, Cambridge--ケンブリッジ大学とバーミンガム大学の研究チームは、レーザビームトラップを使って、喘息吸入器からの薬剤粒子の流れを調べた。この研究は、吸入器の効果改善に役立つと考えられている。
 科学技術施設協議会(STFC)センタレーザ施設でOctopusレーザイメージングファシリティを使って研究チームは、硫酸サルブタモール薬剤の個々の固体粒子を捉えた。
 吸引器から肺までの薬剤の流れはわずか数秒で起こる。この数秒間の変化の重要な点は、薬剤が身体に入ったときの湿度。これによって水が粒子表面に付着し、最終的に水滴の中で薬剤粒子が溶ける。粒子がどの程度の水分を吸収するか、どの程度速いかは、粒子の化学成分に依存する。
 「人の気道は解剖学的に、吸入する粒子を阻止するように進化している。この自然の防御機構を克服するには、複雑な放出デバイス、極度に小さな粒子が必要になる」と臨床・実験医療のDr Peter Sevilleは指摘する。
 これらの粒子は一般に、直径2~5µm。吸入器から肺までの間に粒子に付着する水分により粒子サイズが膨らむので、肺の中の粒子の堆積位置に影響を与える。結果として、理想的ではない場所に薬剤が堆積されることが起こり得るので、治療効果が弱まり、副作用が増える可能性がある。
 ラマン分光技術を使って分子からの光の振動と波長を計測し、研究チームは市販の吸引器から放出される硫酸サルブタモールの新たな研究法を実現した。
 化学学部のDr Markus Kalbererによると、顕微鏡を使って薬剤粒子のサイズや形状を観察することはできるが、空気中に漂っている粒子に起こっていることを化学的に正確に知ることはできない。雰囲気化学の技術を使うことで化学的な情報を得ることができ、人の体内と同様に、粒子が固体から液体に移行するときの変化を観察することができる。
 研究チームは、2つの集束ビームの間にトラップすることによって個々の粒子を捉え、異なる温度と湿度レベルでその振る舞いを調べた。薬剤の物理的、化学的特性を変えることなく、吸引器をレーザトラップの中に放出させ、空気中の微小粒子を捉えて、そのサイズ、形状、化学的特徴を記録した、これは水吸収の痕跡を示すためである。これらはすべて数秒の間に起こったことであり、肺の中の相対湿度と粒子の軌跡を厳密に再現している。
 「体内に入ったこれらの薬剤に起こることを正確に知ることは、より素早く身体に取り込まれる新たな喘息治療の開発につながる」とDr Kalbererは説明している。