November, 18, 2014, Tokyo--富士通研究所は、LED照明などからモノへ照射する光にID情報を埋め込み、その光に照らされたモノからID情報を復元可能な照明技術を開発した。
照明から照射する光に目には見えない通信情報を埋め込むことで、照明に照らされたモノから、例えばスマートデバイスなどのカメラへの情報配布を実現する。従来技術では、ユーザのいる場所に応じたエリア単位での関連情報の配布が可能だったが、新技術ではモノ単位での情報配布を実現し、ユーザはカメラをモノに向けるだけで、様々な情報を取得することが可能となる。この技術により、店舗の商品、美術品、人物、建造物など様々なモノを情報の発信源にすることができる。
従来技術の問題点として、識別情報をモノに直接貼り付けると、美観を損ねたり対応機種が限られたりする。一方、モノの位置を利用すると、店舗やコーナーごとのエリア単位の情報をユーザーに配布するには適している反面、目の前にある商品など個々のモノ単位で異なる情報を付与するといった、より細かい個体の情報配信への適用は難しい場合があった。
富士通研は、LED照明から発する光の色を人の目には見えないレベルで変調し、その光を照射したモノにID情報を付与する技術を開発した。新技術の通信速度は10bps。既存スマートフォンで受信可能であり、モノの美観を損ねることなく、モノ単位での情報付与が可能。モノに情報を付与する照明は、将来的には、LED電球として商品化することも可能。
開発した技術の要点。
・色変調による情報埋め込み技術
カラーLEDはRGBの3色の光を合成して様々な色の光を照射することが可能。RGBの各色成分から発する光の強弱を時間方向で制御し、わずかに変化させることによってモノを識別するID情報を表現する。1つのLED照明につき、1つのID情報を付与。
・反射補正技術
光がモノの表面で反射する際に反射率に応じて光の一部が吸収されたり、反射したりする。RGBの各波長に埋め込んだ信号は、反射時に一部が吸収されることによって弱くなることがあるため、カメラで撮影した映像に対して反射を考慮した補正を行うことによって、情報の検出精度を高めることに成功した。
この技術により、光を照射されたモノや人物に例えばスマートフォンをかざすだけでモノにID情報を付加することが可能となり、IDに対応する関連情報をスマートフォン経由で取得できる。これにより、例えば以下のような様々なサービスへの展開が可能になる。
・商品にスマートフォンをかざすだけで、商品情報を提供し、将来的には自動決済や配送なども実現可能
・博物館、美術館で展示物にスマートフォンをかざすだけで解説動画をストリーミング再生
・舞台上のタレントにスマートフォンをかざすだけで歌っている楽曲をダウンロード
・観光地の歴史的建造物や看板などにスマートフォンをかざすだけでより詳しい情報や解説を母国語で表示
また、この技術はLED照明に限らず、例えば、プロジェクターの照明に応用することも可能。
富士通研究所は、様々な設置環境で評価検証するとともに、この技術の精度をさらに向上し、2015年度中の実用化を目指している。