October, 3, 2023, Washington--Yale大学の研究チームは、スペクトルの紫外線(UV)および可視領域で動作し、記録的な低UV光損失を示すチップベースフォトニック共振器を実現した。
新しい共振器は、UVフォトニック集積回路(PIC)設計のサイズ、複雑さ、忠実度を高めるための基礎を築き、分光センシング、水中通信、量子情報処理などのアプリケーション向けの新しい小型チップベースのデバイスを可能にする可能性がある。
イェール大学(Yale University)の研究チームメンバーChengxing Heは「テレコムフォトニクスや可視フォトニクスなどの確立された分野と比較して、原子/イオンベースの量子コンピューティングで特定の原子遷移にアクセスし、バイオケミカルセンシングのために特定の蛍光分子励起にUV波長が必要であるにもかかわらず、UVフォトニクスはあまり研究されていない。われわれの研究は、UV波長で動作するフォトニック回路を構築するための優れたベースになる」とコメントしている。
Optics Express誌では、アルミナベース光マイクロ共振器と、適切な材料と最適化された設計および製造を組み合わせることにより、UV波長で前例のない低損失を達成した方法について説明している。
「われわれの研究は、UV PICが、導波路の光損失が可視の対応物と比較して、もはや大幅に悪くない臨界点に達したことを示している」と研究チームリーダー、Hong Tangは話している。「これは、周波数コムやインジェクションロックなど、可視および通信波長用に開発されたすべての興味深いPIC構造をUV波長にも適用できることを意味する」。
光損失の低減
マイクロ共振器は、Entegris Inc.の共著者Carlo WaldfriedとJun-Fei Zhengが、高度にスケーラブルな原子層堆積(ALD)プロセスを使用して調製した高品質のアルミナ薄膜から作られた。アルミナは~8eVの大きなバンドギャップにより、バンドギャップよりもはるかに低い(~4eV)エネルギーを持つUV光子に対して透明になる。したがって、UV波長はこの材料によって吸収されない。
「以前の記録は、~6eVのバンドギャップを持つ窒化アルミニウム(AlN)で達成された。単結晶AlNと比較して、アモルファスALDアルミナは欠陥が少なく、製造が難しくないため、損失を減らすことができた」と同氏は説明している。
マイクロ共振器を作製のために、研究チームはアルミナをエッチングして、一般にリブ導波路として知られているものを作製した。リブが深くなると、閉じ込めは強くなるが、散乱損失も強くなる。シミュレーションを使用して、散乱損失を最小限に抑えながら必要な光閉じ込めを実現するために、適切なエッチング深さを見つけた。
リング共振器の作製
研究チームは、導波路から学んだことを適用して、半径400-µmのリング共振器を作製した。その結果、厚さ400-nmのアルミナ膜でエッチング深さ80nm以上の場合、放射損失は488.5nmで0.06dB/cm未満、390nmで0.001dB/cm未満に抑えられることを確認した。
これらの計算に基づいてリング共振器を作製した後、研究チームは共振器に注入された光周波数をスキャンしながら共振ピーク幅を測定することによってQファクタを決定した。チームは、390nm(スペクトルのUV部分)で1.5 × 10^6、488.5nm(可視青色光の波長)で1.9 × 10^6の記録的な高品質(Q)ファクタを発見した。Qファクタが高いほど、光の損失が少ないことを示している。
「可視またはテレコム波長のPICと比較して、UV PICは、帯域幅が大きいため、または水中などの他の波長が吸収される条件で、通信で優位性を見つける可能性がある。また、アルミナの作製に使用されるALDプロセスがCMOS互換であるということは、アモルファスアルミナベースのフォトニクスとのCMOS統合への道を開く」と同氏はコメントしている。
研究チームは現在、様々な波長で動作するように調整できるアルミナベースのリング共振器の開発に取り組んでいる。これは、正確な波長制御を実現したり、互いに干渉する2つの共振器を使用して変調器を作製したりするために使用できる。また、PICベースUVシステム全体を形成するために、PICに統合されたUV光源の開発も考えている。