September, 26, 2023, 和光--理化学研究所(理研)の共同研究グループは、「アイスコアレーザ融解サンプラー(Laser Melting Sampler:RIKEN-LMS)」と名付けた装置を開発した。
これは、レーザ融解によってアイスコアから水試料の採取を行う世界初の装置で、アイスコア科学の超精密化や深層コアの分析の進展に貢献するものと期待される。
過去の地球の気温変動を調べるには、南極氷床などのアイスコアの水の安定同位体比が分析されるが、従来の試料採取法では深度分解能に限界があった。特に、南極大陸内陸域で掘削された深層コアは、深部では押しつぶされており、そこに刻まれた気温の情報を1年以下の時間分解能で取得することは、これまではできなかったが、RIKEN-LMSにより初めて可能になる。
共同研究グループは、国立極地研究所(NIPR)と協力して南極ドームふじ基地のアイスコアにRIKEN-LMSを適用し、レーザ光照射により融解した水試料を3mmという高い深度分解能で離散的に採取・分析した。その結果、水の安定同位体比の分析値が、同じアイスコアについて手で分割した試料の分析値と、分析不定性の範囲内でよく一致することが示された。手分割した試料の分析値は真値に近いと考えられており、これにより、LMS装置の信頼性および有用性が実証された。
現在、「最古の氷」の掘削を目指して、過去150万年程度の連続した深層コアを掘削する計画が各国で進行中である。理研発のレーザ融解サンプリング法は、この「最古の氷」の分析にも役立つと期待される、革新的な発明である。
研究成果は、科学雑誌『Journal of Glaciology』オンライン版(9月19日付:日本時間9月19日)に掲載された。
研究グループ
理化学研究所(理研)仁科加速器科学研究センター 雪氷宇宙科学研究室の望月優子 室長、中井陽一 専任研究員、矢野安重 客員主管研究員、光量子工学研究センター 光量子制御技術開発チームの和田智之 チームリーダー他
(詳細は、https://www.riken.jp)