August, 7, 2023, 東京--東京学芸大学の前田優教授、山田道夫准教授の研究グループは、分子科学研究所の江原正博教授、Zhao Pei助教と、東北大学笠井均教授、三ツ石方也教授、長崎大学Anh T. N. Dao准教授との共同で、フッ素原子を置換したフルオロアルカンを用いた化学修飾によって、従来技術と比較して、波長選択的かつ最も長波長域に近赤外発(NIR)光を発現させることに成功した。
実験と理論化学のインタープレーにより、フッ素原子の利用と反応点を2つ組み込ませた反応試薬を用いることで、化学修飾率や付加様式の制御が可能となり、結果としてカーボンナノチューブ(CNT)から生じるNIR発光を、著しく長波長側へ波長制御できることを明らかにした。
研究成果は、国際学術雑誌「Communications Chemistry」に2023年7月31日に掲載された。
発表の要点
・付加様式の制御と電子的効果を組み合わせたCNTの化学修飾によって、近赤外発光波長を選択的に、これまでで最も大きく長波長にシフトさせることに成功した。
・実験結果とモデル分子を用いた理論計算の結果の比較から、アルキル基の水素原子をフッ素原子に置換することによって、生じる発光の選択性の向上と発光波長の長波長化の2つの効果が発現することがわかった。
・極めて大きい発光波長の長波長化が実現し、バイオイメージングや光通信、光量子デバイスなどの近赤外光源としての活用が期待される。
(詳細は、http://www.tohoku.ac.jp)