Science/Research 詳細

超伝導量子コンピュータにおける 新しい2量子ビットゲート方式の発明・実証

July, 3, 2023, 東京--東京大学大学院 総合文化研究科の白井菖太郎大学院生、大久保裕太 大学院生(研究当時)、野口篤史准教授、理化学研究所 量子コンピュータ研究センターの中村泰信センター長らの研究グループは、コヒーレンス時間の長さと配線の簡便さで優れる超伝導量子ビットの一種である単一接合トランズモン量子ビットにおいて、長年課題であった量子ビット製造時の周波数ばらつきに対する脆弱性と量子ゲートの精度を低下させ計算中の誤りを生む残留相互作用の問題を克服する、新しい2量子ビットゲート方式を発明しその動作を実験的に実証した。

この成果は追加の磁場制御配線を導入せずに高速なゲート操作と残留相互作用低減の両立が可能であり、希釈冷凍機内部で扱うことのできる量子ビット数を将来的に増やすことを通じて、次世代の社会基盤技術となることが期待される量子コンピュータの開発に貢献する。

研究成果は、2023年6月29日(米国東部夏時間)に国際科学誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載された。

発表の要点
・デコヒーレンスの原因となる磁場を用いることなく、超伝導量子ビット作製時の周波数ばらつきに強い耐性を持つ新しい2量子ビットゲート方式を発明・実証した。
・超伝導量子コンピュータの基本素子として有力視される単一接合トランズモン量子ビットを用いて計算する際、誤りの原因となる残留相互作用をゲート速度の犠牲なく逓減できることを世界で初めて見いだし、実験的にも実証した。
・単一接合トランズモン量子ビットの課題であった製造時の周波数ばらつきに対する脆弱性や残留相互作用の問題を解決し、近年発展を続ける超伝導量子コンピュータの開発において量子ビット数増加のさらなる加速に貢献することが期待される。
(詳細は、https://www.c.u-tokyo.ac.jp)