June, 27, 2023, Dresden--ドイツ、スペイン、UKの研究者は、グラフェンの助けを借りてテラヘルツ波の可視光への超高速、チューナブル変換を実証した(Nano Lett., doi: 10.1021/acs.nanolett.3c00507)。アップコンバージョンは、グラフェンの加熱電子システムからの熱放射メカニズムにより起こる。
研究成果の潜在的なアプリケーションは、幅広い範囲のテラヘルツフォトニクス技術、6Gワイヤレス通信システムなどである。
6G以降
THz放射は、マイクロ波と遠赤外の間の移行領域にあり、それぞれの特徴を共有している。近年、テラヘルツ放射への関心が高まっている、セキュリティスクリーニング、天文学、品質制御および他の分野である。最も注目すべきは、テラヘルツ周波数(0.1–10 THz)における高速、広帯域ワイヤレス通信が、システムを5G以降へ推し進める能力である。
現在の通信技術では、周波数変換が、電子デバイスとエンドユーザ間で高い情報転送能力を提供する光インタコネクトを可能にする。
「したがって、THzを可視光あるいは赤外に変換する高速で制御性のよいメカニズムが必要になる。これらは、光ファイバで伝送できるからだ」とドイツ、HZDR、放射物理学研究所、Igor Ilyakovは説明している。「イメージングおよびセンシング技術もその様なメカニズムから恩恵を受ける」。
グラフェンの力
研究チームは、THz光パルスに対する強力な非線形応答が、THz領域、可視光および近赤外光で期待通りの高調波を生成することを発見した。チームは、グラフェンの様々なサンプルを調べた。単層グラフェン、数層のグラフェン膜およびグレーティンググラフェンメタマテリアル。単サイクルTHzパルスでそのサンプルを励起した後、サブナノ秒時間スケールで光変換が急速に起こった。
「これまで、この効果は極めて非効率だった、基礎にある物理的メカニズムは知られていなかった」とHZDR、放射物理学研究所、研究の著者、Sergey Kovalevは、話している。
研究チームは、そのプロセスがTHz誘導熱放射によるものであると考えている。入射THz放射は、グラフェンのモバイル電荷キャリアによって吸収され、これが急速にエネルギーを交換し、可視光スペクトルのキャリア加熱とフォトン放出につながる。グレーティングーグラフェンメタマテリアルを利用すると、可視光の放射パワーの二桁増となった。
その技術は、通信フォトンからの信号をTHzフォトンに、またその逆に変換する方法として使える。研究チームは、THz誘導熱放射スペクトルのピークが、1eV付近で起こると付け加えている。これは、最も重要な通信帯域である。