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ナノマテリアル、焼結なしの3Dプリントガラス

June, 14, 2023, Karlsruhe--カールスルーエ工科大学(KIT)で開発されたプロセスは、直接半導体チップにプリントできるナノメートルの微細石英ガラス構造体を作る。ハイブリッド有機ー無機ポリマレジンは、二酸化ケイ素の3Dプリンティング出発材として役立つ。そのプロセスは、焼結を必要としないので必要な温度は著しく低い。同時に、高分解能が可視光のナノフォトニクスを可能にする。チームは、Scienceに成果を発表した。

マイクロメートルおよびナノメートルの微細構造で純粋二酸化ケイ素でできた石英ガラスのプリンティングは、オプティクス、フォトニクス、半導体などのアプリケーションに新しい機会を開く。しかし、今までは、従来の焼結ベースの技術が優勢だった。二酸化ケイ素ナノ粒子焼結に必要な温度は、1100℃を上回り、熱すぎて半導体チップに直接蒸着できない。KIT Institute of Nanotechnology (INT)のDr. Jens Bauerをリーダーとするチームは、今回、新しいプロセスを開発した。これにより、非常に低い温度で高分解能、優れた機械的特性の透明石英ガラス製造が可能になる。

ハイブリッド有機ー無機ポリマレジンは、出発材として役立つ
Emmy NoetherジュニアリサーチグループKITの”Nanoarchitected Metamaterials” 長、BauerとUniversity of California Irvineの同僚およびアーバインの医療技術会社Edwards Lifesciencesは、Science誌でその方法を紹介した。特別に開発されたハイブリッド有機ー無機ポリマレジンは、出発材として役立つ。この液体レジンは、いわゆるカゴ型シルセスキオキサン(POSS)で構成されている。微小なカゴのような二酸化ケイ素分子には有機官能基が備わっている。

いったん形成されると、完全3Dプリントされ、ネットワーク化されたナノ構造を空気中で650℃まで加熱する。そのプロセスで、有機成分が放出され、同時に無機POSSケージが結合し、連続的溶融シリカマイクロ構造およびナノ構造となる。必要な温度は、ナノ粒子焼結に基づいたプロセスの半分に過ぎない。

厳しい化学的、熱的条件に耐える構造
「低温により、ロバスト、透明、自立型光ガラス構造を半導体チップに、可視光ナノフォトニクスに必要な分解能で直接プリントできる」とBauerは説明している。優れた光学品質に加えて、この方法で製造された石英ガラスは、優れた機械特性を備えており、加工が容易である。

カールスルーエとアーバインのチームは、POSSレジンで多くの多様な構造をプリントした。これには、自立型97nmビームのフォトニック結晶、パラボリックマイクロレンズ、ナノ構造素子をもつマルチレンズ・マイクロレンズが含まれる。「われわれのプロセスにより、厳しい化学的、あるいは熱的条件にも耐える構造が可能になる」とBauerは話している。