May, 2, 2023, Peking--北京大学の研究者は、通信信号をノイズから分離し、全無線周波数スペクトルから不要な干渉を抑制する新しいチップサイズのマイクロ波フォトニックフィルタを開発した。
デバイスは、次世代ワイヤレス通信技術が、携帯電話、自動運転車、インターネット接続機器、スマートシティインフラストラクチャなどのデバイスからの信号で混雑した環境で、効率よくデータを伝送するのに役立つと期待されている。
「この新しいマイクロ波フィルタチップは、6Gなどのワイヤレス通信を改善する可能性があり、インターネット接続の高速化、全般的な通信エクスペリアンスの改善、ワイヤレス通信システムでコストとエネルギー消費低減につながる」と北京大学の研究者、Xingjun Wangは、話している。さらに同氏は、「この進歩は、直接、間接的に日常生活に影響を及ぼし、生活の質全体を改善し、モバイル、スマートホーム、公共の場所など様々な領域で新たなエクスペリアンスを可能にする」とコメントしている。
研究成果は、Photonics Researchに発表された。
研究チームは、30GHzを超える無線周波数で、そのフィルタの動作能力を実証しており、それが今後の6G技術に適用できることを示している。
干渉対策
6G技術は、現在導入されている5G通信ネットワークの改善目的で開発が進んでいる。より高速に、より多くのデータを伝送するために6Gネットワークは、ミリ波、テラヘルツ周波数帶までを利用すると考えられている。これは、極めて広い周波数スペクトルで高速データを分配するので、様々な通信チャネル間で干渉の可能性が高い。
この問題を解決するために研究チームは、全無線周波数スペクトルで様々なタイプの干渉から信号を保護できるフィルタの開発を考えた。広く導入するためにコスト効果よく実用的にするには、このフィルタは小型で低消費電力、多数のフィルタリング機能をもち、チップに集積可能にすることが重要である。しかし、以前のデモンストレーションは、機能の少なさ、大きなサイズ、限られた帯域、電気部品に関連する要件で制約されていた。
新しいフィルタのためにチームは、4つの主要部分をもつ簡素化されたフォトニックアーキテクチャを作成した。まず、位相変調器が無線周波数信号の入力として機能する。これは、電気信号を光ドメインに変調する。次に、ダブルリングが、スイッチとして機能し、変調フォーマットを成形する。調整可能マイクロリングは、信号処理の中核ユニットである。最後に、フォトディテクタが、無線信号の出力として機能し、光信号から無線周波数信号を回復する。
「ここでの最大のイノベーションは、デバイス間の障壁を破り、それらの間の連係動作を達成したことである。ダブルリングとマイクロリングの協調作業により、一貫した強度のシングルステージ調整可能カスケードマイクロリング(ICSSA-CM)アーキテクチャが可能になる。提案したICSSA-CMの高い再構成可能性により、多様なフィルタリング機能のための余分な無線周波数デバイスが不要になる。これは、システム構成全体を簡素化する」とWangは説明している。
パフォーマンスの実証
そのデバイスをテストするためにチームは、高周波プローブを使って無線周波数信号をチップにロードし、高速フォトディテクタで回復した信号を収集した。チームは、任意波形発生器と指向性アンテナを使い、2Gb/s高速ワイヤレス伝送信号をシミュレートし、処理した信号を受信するために高速オシロスコープを使った。フィルタありとフィルタなしの結果を比較することで研究チームは、フィルタのパフォーマンスを実証することがむできた。
全般的に、以前の数100の反復ユニットで構成されたプログラマブル集積マイクロ波フォトニックフィルタと比較して、簡素化されたフォトニックアーキテクチャは、損失とシステムの複雑さを低減して、同等のパフォーマンスを達成していることを研究成果は示している。これにより、それは、以前のデバイスと比較してロバストで、エネルギー効率が優れ、製造しやすくなっている。
研究チームは、その変調器をさらに最適化し、デバイスとシステムレベルの両方で高集積を確保しながら、全般的なフィルタアーキテクチャを改善し、高ダイナミックレンジと低雑音を達成する計画である。