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量子コンピュータを利用できる「量子計算クラウドサービス」開始

March, 28, 2023, 和光--理化学研究所(理研)量子コンピュータ研究センター他、共同研究グループは、2023年3月27日に量子コンピュータをクラウド公開し、外部からの利用を開始する。

研究成果は、国内の量子計算プラットフォームの利用拡大に貢献する。

量子力学の基本原理を計算・通信・計測といった情報科学・情報処理技術にも適用するため、量子情報を取り扱う技術の研究が世界中で進められている。理研は、2021年に量子コンピュータ研究センターを設立し、量子計算を実行する量子コンピュータの研究開発を進めている。

今回、共同研究グループは量子コンピュータによる量子計算プラットフォーム構築の一歩として、超伝導方式による国産量子コンピュータ初号機を整備した。さらに、同機を用いて、インターネットを介して外部利用が可能なクラウドサービスを開始した。当面は、ユーザは理研との共同研究契約を通じて利用手続きを行う。

大学を含む国内研究機関と企業との連携によって、今回の「量子計算クラウドサービス」は実現した。同サービスは、研究開発段階における国内の量子情報の研究に関わる人材育成だけでなく、人材の受け皿となる、情報技術分野を基幹とした国内産業の発展ももたらすと期待できる。

研究手法と成果
今回公開する超伝導量子コンピュータでは、量子ビットを64個並べた64量子ビットの集積回路が用いらる。同装置には「2次元集積回路」と「垂直配線パッケージ」という二つの特徴がある。

2次元集積回路の上では、正方形に並べられた4個の量子ビットが、それぞれ隣り合う量子ビットをつなぐ「量子ビット間結合」で接続されてい.。また、正方形の中に「読み出し共振器」、「多重読み出し用フィルタ回路」などが配置されてい.。この4量子ビットからなる基本ユニットを2次元に並べることにより、量子ビット集積回路を作ることができる。今回の64量子ビット集積回路は、16個の機能単位から構成され、2cm角のシリコンチップ上に形成されている。

また、個々の量子ビットに対する制御や読み出し用の配線の取り回しにも工夫が必要になる。量子ビットと同じ平面上で配線を行う場合、チップ内に並ぶ量子ビットの数に対して、配線を外部へ取り出すための辺の長さが不足してしまう。そのため、2次元平面に配置された量子ビットへの配線をチップに対して垂直に結合させる垂直配線パッケージ方式を採用。さらに量子ビット集積回路チップへの配線を一括で接続できる配線パッケージも開発した。

これらの特徴的な「2次元集積回路」と「垂直配線パッケージ」は、容易に量子ビット数を増やすことを可能にする高い拡張性を備えたシステム構成となっている。これにより、今後の大規模化に際しても基本設計を変えることなく対応することができる。

量子ビットを制御するための信号には、マイクロ波の周波数(8~9GHz)で振動する電圧パルスが用いられる。しかし、量子ビットごとに異なる周波数のマイクロ波が必要となるため、共同研究グループは高精度で位相の安定したマイクロ波パルス生成が可能な制御装置、およびこれを用いて量子ビットを制御するソフトウェアを開発した。

共同研究グループは、さらに多くの量子ビットでの量子計算動作を可能にするため、希釈冷凍機内の配線の高密度化など、さらなるシステム開発を進めている。また超伝導量子コンピュータをNISQ応用プラットフォームのテストベッドとして提供しつつ、ユーザのニーズなどを踏まえ、公開装置についてもさらなる高度化に向けた必要な研究開発を進めていく。

今回の量子計算クラウドサービス公開を通じて、量子ソフトウェア開発者や量子計算研究者および企業開発者との協力を深めることで、量子コンピュータ研究開発を一層加速する。

共同研究グループ
理化学研究所(理研)量子コンピュータ研究センターの中村泰信センター長、産業技術総合研究所3D集積システムグループの菊地克弥研究グループ長、情報通信研究機構超伝導ICT研究室の寺井弘高室長、大阪大学量子情報・量子生命研究センターの北川勝浩センター長(大学院基礎工学研究科教授)、藤井啓祐副センター長(大学院基礎工学研究科教授、理研量子計算理論研究チームチームリーダー)、富士通株式会社量子研究所の佐藤信太郎所長、日本電信電話株式会社コンピュータ&データサイエンス研究所の徳永裕己特別研究員ら
(詳細は、https://www.aist.go.jp)