March, 8, 2023, Berlin--ヘルムホルツツェントルムベルリン(HZB)のチームは、ペロブスカイトとシリコンでできたタンデムソーラセルで現在世界最高効率29.15%の開発についてScience誌に報告した。
同タンデムセルは、エンカプセレーションさえなしで300時間安定動作した。この達成のためにSteve Albrecht教授のグループは、電荷キャリアトランスポート改善に向けて界面における物理的プロセスを研究した。
異なるバンドギャップを持つ2つの半導体で構成されるソーラセルは、タンデムで利用すると、個々のセル単独と比較して、著しい高効率を達成できる。これは、タンデムセルが、ソーラスペクトルをより効率的に利用するからである。特に、従来のシリコンソーラセルは、主に光の赤外成分を効率的に電気エネルギーに変換し、一方特定のペロブスカイト化合物は、太陽光の可視光成分を効果的に利用するので、これは強力な組合せになる。
新記録29.15%
2020年初め、HZBのSteve Albrecht教授のチームは、ペロブスカイトとシリコンでできたタンデムソーラセルの以前の世界記録(28.0%, Oxford PV)を破り、29.15%の新たな世界記録を達成した。認定され、公表された最高の効率(26.2% in DOI: 10,1126/science.aba3433)と比べると、これは大きな前進である。その新しい値は、Fraunhofer ISeで認定され、NRELチャートに加えられている。今回、その成果は、製造プロセスと基本的な物理学の詳細説明を加えてScience誌に発表された。
300時間を超える一貫した性能
「29.15%効率は、この技術の記録であるとともに、NRELチャートの全Emerging PVカテゴリの最上位にある」とAlbrechtチームのPh.D学生、研究の共同筆頭著者Eike Köhnenは、コメントしている。さらにその新しいペロブスカイト/シリコンタンデムセルは、エンカプセルで保護されることなく空気と刺激的陽光への連続暴露で300時間以上の一貫したパフォーマンスにより特性評価されている。チームは、1.68 eVバンドギャップの複雑なペロブスカイト構成を利用し、基板界面の最適化を重視した。
有用性:自己組織化モノレイヤ
リトアニアパートナー(Vytautas Getautis教授のグループ)とともに、研究チームは、自律的に自己組織化(SAM)に落ち着く有機分子の中間層を開発した。それは、メチル基置換(Me-4PACz).、新しいカルバゾール系分子で構成されている。このSAMは、電極に適用され、電荷キャリアの流れを手助けした。Albrechtチームのメンバー、Amran Al-Ashouriは、「われわれは最初に、ペロブスカイトを置く完璧な場所を用意した」と言う。同氏は、研究の筆頭著者。
フィルファクタの最適化
次に研究チームは、一連の補完的調査方法を利用して、ペロブスカイト、SAM、電極間の界面で様々なプロセスを解析した。「特に、いわゆるフィルファクタを最適化した。これは、ペロブスカイトのトップセルから出る途中、電荷キャリアの数によって影響を受ける」とAl-Ashouriは、説明している。電子がC60レイヤから太陽光の方向へ流れ落ちる間に、”ホール”がSAMレイヤから反対方向へ動き電極へ入る。「しかし、ホールの抽出は、電子の抽出よりも遙かに緩慢であることを観察した。これがフィルファクタを制約したのである」(Al-Ashouri)。とは言え、新しいSAMレイヤは、ホールのトランスポートを著しく加速し、同時にペロブスカイト層の安定性改善に貢献している。
方法の組合せ
フォトルミネセンス分光法、モデリング、電気特性評価とテラヘルツ導電率計測の組合せで、ペロブスカイト材料の界面で様々なプロセスを区別し、大きな損失の原因を決定することができた。
(詳細は、https://www.helmholtz-berlin.de)