February, 15, 2023, 札幌--北海道大学大学院工学研究院の富田健太郎准教授らの研究グループは、大阪大学レーザー科学研究所の西原功修博士(大阪大学名誉教授)、米国パデュー大学の砂原淳博士、ギガフォトン株式会社の開発チームと共に、世界各国がしのぎを削る最先端の半導体製造に必須の技術である、EUV露光の高出力化に重要な役割を果たす、光源プラズマの複雑な流れ構造を世界で初めて明らかにした。
EUV露光とは、非常に短い波長(13.5nm)の光を用いる露光技術であり、半導体の2nm線幅以下の超微細加工に不可欠。露光機内では光源からの光を転送するために多数の反射ミラーを利用するが、EUV領域のミラー反射率は高くない。そのため、極めて高出力なEUV光源(温度が30万度程度のプラズマ)が必要となる。EUVが光る原理を考えると、光源プラズマの温度とともに密度やプラズマの流れを把握し、制御することが基本となるが、プラズマの寿命は20ナノ秒(ns)程度、大きさは0.5㎜以下であるため、これまでプラズマ内部の高速流動現象の把握は困難だった。
今回、研究グループは、新開発したレーザトムソン散乱計測システムを用いて、世界で初めて秒速数10キロメートルの複雑なプラズマの流れを、非接触な方法で可視化することに成功した。その結果、光源プラズマ内部では通常と異なる中心部への流れが存在し、その流れがEUV発光強度の増加に寄与していることを明らかにした。この発見は、EUV光源のさらなる高出力化の鍵となる知見であると同時に、「プラズマの流れを制御して光の出力を向上させる」という、まったく新しい概念の可能性を示すものである。
研究成果は、2023年2月1日(水)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.hokudai.ac.jp)