February, 1, 2023, 京都--京都大学、電子工学専攻の 野田進 教授、井上卓也 同助教、森田遼平 同特定研究員らのグループは、数10ピコ秒以下という超短時間の間に、面内の共振波長分布が高速に自己変化可能なフォトニック結晶を考案し、それを利用することにより、短パルス(<30ps)かつ高ピーク出力(>80 W)レーザ発振を実現することに成功した。
この成果は、フォトニック結晶における新たな物理現象の発現という学術的な意義があるとともに、将来の超スマート社会を支える高精度光センシングやレーザ微細加工応用にとっても、極めて重要な成果と言える。
来るべき超スマート社会 (Society 5.0)においては、自動運転等のスマートモビリティにおいて必須である高精度光センシングや、熱の影響を受けない超精密なレーザ加工を実現するため、数10ps以下の極めて短いパルス幅をもつ高ピーク出力光源が必要とされている。しかし、従来の半導体レーザは、高出力化のため、光出射面積を増大すると、発振モードが多モード化してビーム品質が劣化するため、ピーク出力の限界があった。
研究グループは、上記の問題を解決するべく、高出力動作と高ビーム品質動作の両立が可能なフォトニック結晶レーザに、可飽和吸収体(光の強度が強くなるとともに、光の吸収が減少する物質)を導入することで、これまでに、パルス幅数10ps未満でピーク出力20W級の短パルスレーザ発振の実証に成功している。
今回、研究グループは、さらに高出力な短パルス発振を実現するための新たな工夫として、数10ps以下という僅かな時間の間に、面内の共振波長分布が高速に変化する自己変化可能なフォトニック結晶を考案した。さらに、このフォトニック結晶を、フォトニック結晶レーザの内部に導入することで、パルス幅30ps未満で、ピーク出力80W超(これまでの4倍以上に相当)の短パルス発振を実現した。
研究成果は、2023年1月27日に、英国科学誌Nature Communicationsのオンライン版にて掲載された。
(詳細は、https://www.t.kyoto-u.ac.jp)