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希土類金属無しで、太陽から安価な水素燃料生成

October, 8, 2014, Lausanne--スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のMichael Grätzel氏をリーダーとするフォトニクス&インタフェース研究所では、植物の光合成を真似る色素増感太陽電池を発明したが、そこでは太陽で水を分解することで水素燃料を生成する方法も開発した。
 これを行うには、太陽光にあてることで水を直接水素と酸素に分解する光電気化学電池を使うか、あるいは水を分子に分解する電界槽と発電用の電池を結びつける。
 後者の技術を使うことでGrätzel氏のポスドク学生、Jingshan Luo氏のチームは優れたパフォーマンスを実現することができた。そのデバイスは、太陽によってペロブスカイト吸収体に拡散されたエネルギーの12.3%を水素に変換する。ペロブスカイトは実験室で一般材料、例えば従来の自動車のバッテリーに使用されている材料から得られ、使用可能な水素燃料の生産に希土類金属が不要になる。
 この方法の優位性についてJingshan Luo氏は、「電池に使われるペロブスカイトや電極を造るニッケル、鉄触媒は、地球上に豊富にあり、安価でもある。しかし、われわれの電極は通常使われている高価なプラチナベースのモデルと同等に機能する」と説明している。
 また、太陽エネルギーを水素に変換することによってその蓄積が可能になる。これは、再生可能電気が直面している最大の難点の1つ、生産と同時に使う必要がある、という問題に対処するものである。
 また、Grätzel氏によると、EPFLで達成した12.3%の変換効率はいずれもっと高くなる。
 この高い効率は、ペロブスカイト電池の特性によるもので、1V以上の開回路電圧生成能力(シリコン電池は0.7Vで止まる)による。「電気分解を起こして利用できる気体を得るには1.7Vかそれ以上が必要だ」(Luo氏)。この数字を実現するには、3個、それ以上のシリコン電池が必要だが、ペロブスカイトなら2個でよい。結果として、必要とされる光吸収体面はより効率的になる。「たったの2個の電池で、電気分解を通じて水素を生成したのはわれわれの成果が初めてである」とLuo氏はコメントしている。