January, 31, 2023, Lausanne--EPFLを含む欧州コンソーシアムは、スイスのMount Säntis頂上にインストールされたハイパワーレーザを使って稲妻誘導に成功した。
山火事、停電、インフラストラクチャ損傷。稲妻は、同程度に魅力的で破壊的であり、広範な破壊は言うまでもなく、世界中で年に24000人が死亡している。今日でも、Benjamin Franklinが発明した避雷針が、保護の最高形態である。それにも関わらず、これらの避雷針は、影響を受けやすいサイトで常に適切な保護となるわけではない。
ジュネーブ大学(UNIGE)、エコールポリテクニーク、EPFL、HEIG-VD工学&経営学部、TRUMPF科学レーザ(ミュンヒェン)で構成される欧州コンソーシアムは、見込のある代替法、Laser Lightning Rod(LLR) を開発した。AppenzellのMount Säntis山頂のLLRをテストした後、研究チームは、その実現可能性の証明を得ている。この研究成果は、Nature Photonicsに発表されている。
高度2500mでテスト
強力なレーザパルスを使って、導電性イオン化空気チャネルを生成することで、LLRを使用して、そのビームに沿って稲妻を誘導した。従来の避雷針から上に伸ばし、実質的にそれが保護するエリア面まで高くした。LLRプロジェクトは、平均パワー1kW、1 J/パルス、パルス幅1psの新しいレーザの開発を必要とした。TRUMPF科学レーザが設計したロッドは、1.5 m幅、8m長、重量は3トンを上回る。
LLRのテラワットレーザは、Säntis 山頂(高さ2,502 m)、スイスコムの124-m通信タワー付近にあり、稲妻を観察するための計測ツールはEPFLとHEIG-VD / HES-SOが設置した。同タワーは、ヨーロッパの稲妻ホットスポットで、年に100回程度雷が落ちる。
プロジェクトへのEPFLの貢献は、工学部のFarhad RachidiをリーダーとするElectromagnetic Compatibility Lab (EMC)電磁両立性ラボによる。EMC研究者は、上向き稲妻放電開始を調べ、稲妻観察のための実験施設をHEIG-VD / HES-SOと協力して導入した。測定装置に含まれるのは、タワー上の雷電流測定、電磁界アンテナ、X線センサ、稲妻放電を撮像するための高速ビデオカメラと干渉計システム。
「これは、注目に値する実験成果である。厳しい天候条件で山岳地域に多数の計測ステーションを設置しており、各々が時間同期、モニタリング、制御機能を必要としていたからである。これらの同時観察により、われわれはハイパワーレーザを使って、稲妻誘導を確証することができた」(Rachidi)。
2021年6月~9月の間に嵐の活動が予報されるごとにレーザは、活性化された。そのエリアは、予め航空交通を遮断する必要があった。「目的は、レーザのあるなしで違いがあるかどうかを見ることだった。レーザフィラメントがタワーの上で生成されると、タワーが自然に稲妻に撃たれた時に収集したデータとを比較した」と、Laboratoire d’Optique Appliquée (LOA)の研究者、Aurélien Houardは説明している。
雲を通しても効果的
収集した膨大なデータ量を分析するのにほぼ一年かかった。この分析は、LLRレーザが、稲妻を効果的に誘導できることを示している。
「レーザを使った最初の稲妻イベントからわれわれは、放電がタワーに達する前に約60m続くことを確認した、つまり保護面の半径が120から180mに増加したのである」とUNIGE物理学教授、Jean-Pierre Wolfは、説明している。
データ分析は、LLRが、他のレーザと違い、霧(Säntisの山頂ではよくある)など、ビームを止める非常に厳しい天候条件でさえ機能することを実証している。文字通り、ビームが雲を貫通するからである。この結果は、以前には研究室でのみ観察された。コンソーシアムの次のステップは、レーザの活動の高さをさらに高くすることである。長期目標は、10mの避雷針を500mまで拡大するLLRを利用することを含む。
(詳細は、https://actu.epfl.ch)