December, 2, 2022, つくば--産業技術総合研究所(産総研)製造技術研究部門 穂苅遼平主任研究員、栗原一真 研究主幹は、三菱ガス化学トレーディング株式会社、住友ベークライト株式会社、伊藤光学工業株式会社、東海精密工業株式会社と共同で、独自のナノ構造を利用した高機能偏光シートを開発し、さらに世界で初めて射出成形と成膜工程だけで作製できるワイヤグリッド偏光素子を開発した。
今回、独自の三角波形状のナノ構造により、従来のフィルム・シート形態の偏光素子だけでなく、貼り合わせ工程なしで部品形態として実装できる素子の実現にも成功した。ナノインプリント成形で製造した偏光シートでは、偏光板の単体透過率の理論限界値である50%に近い41%を簡便に実現した。この偏光シートは、車載機器に求められる高温・高湿試験(温度85 ℃、湿度85%)に2000時間以上耐えられる。また、独自構造による高い製造性を生かし、反射型偏光板だけでなく吸収型としても加工が可能なことから、従来の偏光板では応用が難しかった用途へも活用できる。
一方、射出成形による製造では、表面にナノ構造を形成しつつそのまま製品形状に形づくることができるため、貼り合わせ工程が不要になり、小型偏光部品の生産にも対応可能。射出成形の金型を入れ子構造にすることにより、偏光軸を同一面内で変化させることもでき、これまでになかった偏光素子の使い方も可能になる。この技術は、ワイヤグリッド偏光素子の優れた光学特性を維持しつつ、形態面での自由度を飛躍的に向上させ、光技術産業の発展に貢献する。
この技術は、2022年12月7日〜9日に幕張メッセで開催される高機能素材Weekにて展示される。
(詳細は、https://www.aist.go.jp)