November, 21, 2022, Urbana--数十年間、明るい蛍光シアニン色素は、ガン細胞が広がる歩哨リンパ節、蛍光ガイド手術におけるガン性腫瘍の特定など様々な医療処置で使われてきた。
広く利用されており、多様であるが、これら合成染料は、状況によっては、その使用を制限する欠点となりうる特性を有している。長時間の光露光下での崩壊の傾向、いわゆる光退色である。
しかし、イリノイ大学化学、ガンセンタの教授、ベックマン先端科学技術研究所、バイオケミストリ支部、Jeff Chanは、シアニンのネガティブな特性のひとつを利用して、特定の目標に薬剤をより効率的に送達し、放出するために、その光退色傾向を有用なメカニズムに変換した。
Journal of the American Chemical Societyに発表された研究では、研究チームは、その光退色傾向を利用して、マウスの乳ガンの部位に強力な化学療法薬剤を正確に放出する方法を説明している。これにより周囲の健康な組織に損傷を与えることなく腫瘍を著しく縮小できる。
化学院生Rodrigo Tapia HernandezとMichael C. Leeおよび研究助手Anuj K. Yadavは、Chan教授と共に論文を共同執筆した。論文は、NIRナノゲル、このナノハイドロゲルシステムをどのように開発したかを詳細に説明している。架橋溶剤としてシアニンを使用している。これは、このナノゲルのポリマ構造の一部であり、一連の小分子薬剤をエンカプセルする。
ナノゲルが腫瘍によって吸収され、光に晒されると、シアニンの光退色効果が始動して、ポリマ構造が劣化し、薬剤を放出する。
「当初は、否定的に見えたものが、プラスの特性となるように回転する」(Lee)。
所望の特性をもつナノゲル開発に約半年かかった。これには生体における安定性、腫瘍に浸透するための最適サイズ、光を照射した時にのみ薬剤を放出する機能、標的エリアの外では最小の毒性効果が含まれる。
これらの特性を備えたナノゲルを開発するとチームは、マウスの乳ガン腫瘍で、普及している薬剤、paclitxelを使用して、チームのアプローチのテストに焦点を絞った。
マウスは、paclitxelを詰め込んだナノゲルで処置され、腫瘍から約2㎝、780nm LEDからのNIR光を30分照射。
この処置は、乳ガン腫瘍の成長を「著しく」減衰させ、同時に健康な組織への巻き添え損傷を回避した、と研究チームは、報告している。研究者の説明によると、650-900nmのNIR範囲内のこれらの波長の光は、強力なトリガーとなる。それが体内深く浸透し、優れた制御性が、一般的に組織に損傷を与えないからである。
「実際に、周辺組織を損傷しない。単なる光退色、つまり、化学療法薬を放出するシアニンの劣化である」(Lee)。
Tapia Hernandezによると、薬剤自体は、化学療法薬が集積しがちな臓器を含め健康な組織にも損傷を与える。しかし、マウスの重要臓器の組織学的データは、損傷を示していなかった。
「これら小さな分子を送達するための手段(ナノゲル)を使うことの背後にある考えは、他の組織へのオフターゲット効果をそれが防ぐことである。それは、腫瘍だけに焦点を当てている、光で照射しているのがその領域だけだからである」(Tapia Hernandez)。
そのオフターゲット効果は、よく知られた、効力のある薬剤paclitxelをわれわれがテストしたかった理由である、1つには、それは健康な組織にも影響を与えることが可能だからである。
薬剤をエンカプセルする新方法の利点は、それが化学的変換なしにできることである。
研究チームの説明によると、光露光による薬剤リリースの他の方法は、フォトケージを含め他にもある。多くの場合、シアニン架橋と類似の染料である。しかし、それらの方法は、各薬剤を化学的に変更して、「ケージに入るよう」にしなければならない。
研究チームのナノゲルシステムの場合、そのような変換ステップは不要である。
化学的変換をなくすとは、その方法が、非常に広範囲の薬剤化合物に適用できることを意味する。
「それは一般化できるシステムであり、それによりわれわれができる事はたくさんある。したがって、それは多くの異なる研究やプロジェクトに扉を開く。われわれが、今、それに取り組んでいる理由である」とTapia Hernandezは、話している。
(詳細は、https://chemistry.illinois.edu/)