November, 1, 2022, Stanford--スタンフォードの研究チームは、現在利用できる最速高分解能プリンタよりも5~10倍高速で、単一物体に多種レジンを使うことができる3Dプリンティング法を設計した。
3Dプリンティングの進歩により、デザイナーやエンジニアは、プロジェクトのカスタマイズが容易になり、様々な規模で物理的プロトタイプを作製、また従来の製造技術で作れない構造を作製できるようになる。しかし、その技術は、まだ制約に直面している。プロセスは遅く、たいていの場合、一度に使わなければならない特殊な材料を必要としている。
スタンフォードの研究者は、単一の物体で多種のレジンを使って高速プリントの見込がある3Dプリンティング法を開発した。Science Advancesに発表されたその設計は、現在利用できる最速の高分解能プリンティング法よりも5~10倍高速であり、研究者は機械的、電気的特性が優れた、より厚いレジンを使うことができる。
「この新技術は、3Dプリンティングの潜在性をフルに実現するのに役立つ」と論文の責任著者、Joseph DeSimoneはコメントしている。同氏は、スタンフォードの放射線学、化学工学教授。「それによってわれわれは複雑な多材料物体をワンステップで製造できる」。
レジンの流れを制御
新しいデザインは、DeSimoneとチームが2015年に開発した3Dプリンティング法、連続液体インタフェース製造(CLIP)の改良である。CLIPプリンティングは、SF映画のように見える、上昇するプラットフォームが薄いレジンのプールから滑らかに、完全に形成されたように見える物体を引き上げる、表面のレジンは、プールを通して照射される連続UV画像で適切な形に硬化される。一方、酸素層が、プールの底で硬化を抑制し、レジンが液体のままにとどま「デッドゾーン」を作る。
デッドゾーンは、CLIPのスピードのカギである。固体ピースが上昇するにつれて、液体レジンは、その背後で一杯になるはずであり、滑らかな連続的なプリンティングが可能になる。しかし、これが常に起こるわけではない、特にピースの上昇が速すぎたり、あるいはレジンが特に粘性がある場合である。この新しい方法、インジェクションCLIP(iCLIP)で、研究チームは、上昇するプラットフォームの上部にシリンジポンプを搭載した。キーポイントで付加的にレジンを加えるためである。
「CLIPのレジンの流れは、まさに受動プロセス。物体を引揚げ、吸着力が材料を必要な領域に持ってくることを願っているだけだ」と論文の筆頭著者、スタンフォード機械工学Ph.D学生、Gabriel Lipkowitzは言う。「この新技術でわれわれは、必要とされているプリンタのエリアにレジンを積極的に注入する」。
レジンは、設計により同時にプリントされる導管で供給される。導管は、物体が完成すると除去される、あるいはデザインの中に組込可能である。静脈や動脈がわれわれの身体に組み込まれるのと同じである。
多材料プリンティング
付加的レジンを別々に注入することでiCLIPは、プリンティングプロセスの過程で多種のレジンによりプリントできることになる。新しいレジンは、それぞれそれ固有のシリンジを必要とするだけである。研究チームは、3つの異なるシリンジでプリンタをテストした。各シリンジは、異なる色に染色されたレジンで満たされている。チームは、複数の国々の有名なビルディングモデルのプリントに成功した。ウクライナ国旗のブルーとイエローでSaint Sophia Cathedral、アメリカの赤、白、ブルーでIndependence Hallをプリントした。
「多様な材料で、あるいは多様な機械的特性の物体を作れることは、3Dプリンティングの至高の目標である。アプリケーションの範囲は、非常に効率的なエネルギー吸収構造から、様々な光学的特性や先端センサを備えた物体まである」(Lipkowitz)。
iCLIPが多様なレジンでプリントできることを首尾良く実証したので、研究チームは、個々のプリントされたピースに流体分配ネットワークの設計を最適化するソフトウエアに取り組んでいる。チームは、設計者がレジンタイプ間の境界で微細制御し、プリンティングプロセスをさらに高速にできることを確実にしたいと考えている。
「設計者は、物体を超高速にプリントするために流体力学を理解する必要はない。われわれは、効率的なソフトウエアを作成しようとしている。これは、設計者がプリントしたいことを分析し、また自動的に分配ネットワークを生成するとともに、様々な材料が多材料目標を達成するように多様なレジンを管理するためにフローレートを決める」(Lipkowitz)。
(詳細は、https://news.stanford.edu)