October, 6, 2022, 東京--NEDOが進める「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、キオクシア株式会社は56GbpsのPAM4信号を送受信できるトランシーバーを開発し、その動作実証に成功した。
データ通信の伝送容量を拡張するため、近年データセンタなどではPAM4方式(4値のデータ転送方式)の高速通信が採用され始めている。一方で、トランシーバがクロック信号(回路の動作タイミングの基準となる信号)を正しく抽出できず、受信性能が大きく劣化するという課題があった。今回、このクロックの誤認識を回避する技術を開発し、試作したトランシーバでの動作実証に成功した。
今後、NANDフラッシュメモリとメモリコントローラ間のインタフェースにこの技術を活用することで、広帯域・大容量のメモリモジュールの実現が可能となる。同メモリモジュールを実装したMobile Edge Computing(MEC)サーバを第5世代移動通信(5G)ネットワーク内に設置し、ビッグデータ解析を行うことで、IoTをはじめとする産業のスマート化が期待される。
今回の成果
従来のCDRでは、PAM4信号からクロック信号のロック位置を決定する際、PAM4信号の特定の遷移点(0→3、3→0、0→0、3→3)だけを受信データと誤認することで、クロック信号が誤った位置にロックしてしまい、正しくデータが受信できない状況が発生していた。
NEDOとキオクシア株式会社は、受信信号からクロック信号のロック位置を検出するにあたり、コンパレータをNRZモードで動作させることにより特定の遷移点を見て受信データを誤認することがなくなり、誤ロックが回避できることを発見した。これを利用して、まずコンパレータをNRZモードで動作させてクロック信号を正しい位置でロックさせた後、コンパレータをPAM4モードへ変更することによりPAM4信号を正しく受信することが可能となった。
最初にコンパレータをNRZモードで動作させた際は、受信機のイコライザ、可変利得増幅器、コンパレータのパラメータを最適化する制御を行い、クロック信号を正しい位置でロックさせる。コンパレータをPAM4モードに切り替えた後にも、イコライザおよびコンパレータのパラメータを最適化する制御を行うことによって、最適な位置にクロック信号をロックさせる。
試作したトランシーバの性能評価の際は、トランシーバの送信機で生成した56GbpsのPAM4信号を一度チップの外部に取り出し、ケーブルを用いてチップ内の受信機にループバックすることにより、56Gbpsでの動作を確認した。試作したトランシーバにおいて今回考案した誤ロック回避機能の有効性を確認しました。
開発成果は、IEEEのSolid-State Circuits Society(SSCS)が主催する国際会議「ESSCIRC(European Solid-State Circuits Conference、期間:2022年9月19日~22日)」に採択され、キオクシア株式会社が現地時間の9月22日に発表した。
(詳細は、https://www.nedo.go.jp)