Science/Research 詳細

原子的にスムースな金結晶でナノフォトニクスアプリケーション向け光圧縮

September, 16, 2022, Daejeon--高分解能散乱タイプスキャニング近接場光学顕微鏡を使って単結晶金基板上の薄い誘電体結晶で高圧縮Mid-IR波を初めて調べた。

KAISTの研究チームと国内外の協力者は、極薄ワンデルワールス結晶で圧縮光波ガイド向け新しいしプラットフォームの実証に成功した。中赤外光を最小損失で導波する方法は、ナノスケールで強力な光-物質相互作用に基づいた次世代オプトエレクトロニックデバイスにおいて、極薄誘電体結晶の実用的なアプリケーションにとってブレイクスルーとなる。

フォノン-ポラリトンは、光の電磁波と結合した極性誘電体におけるイオンの集団振動であり、その電磁場は、光波に比べて著しく圧縮されている。先頃、その材料が高伝導性金属上に設置された場合、極薄ワンデルワールス結晶におけるフォノン-ポラリトンを一段と圧縮できることが実証された。そのような構成では、ポラリトニック結晶における電荷は、金属内で「反射」され、光との結合は、新たな種類のポラリトン波、イメージフォノン-ポラリトンになる。高圧縮イメージモードは、強力な光と物質の相互作用を提供するが、基板の粗さに極めて敏感であり、これがその実用的アプリケーションを阻害している。

これらの制約を課題として、4研究グループは、先進的製造および計測法を利用して独自の実験プラットフォームの開発に取り組んだ。その成果は、Science Advancesに発表された。

KAIST電工学教授Min Seok Jangをリーダーとする研究チームは、高感度走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)を使って、単結晶金基板上の63nm厚六方晶窒化ホウ素(h-BN)スラブを伝播するハイパーボリックイメージ・フォノン-ポラリトン(HIP)の光場を直接計測し、100倍圧縮された誘電体結晶内の中赤外波を示した。

Jang教授、同グループの研究教授、Sergey Menabdeは、多くの波長で伝播するHIP波のダイレクト画像の取得に成功した。また、通常のh-BNにおける超圧縮高次HIPからの信号を初めて検出した。研究チームは、ワンデルワールス結晶におけるフォノン-ポラリトンが、その寿命を犠牲にすることなく、著しく圧縮できることを示した。

これが可能になったのは、h-BNの基板として使用した自家成長金結晶の原子的に平滑な表面によるものである。中赤外周波数で、ゼロ表面散乱、金における極めて小さな抵抗損が、実際的に、HIP伝播に低損失環境となっている。研究チームがプローブしたHIPモードは、低損失誘電体基板のフォノン-ポラリトンと比較して、2.4倍強く圧縮されており、それでも同等の寿命を示した。したがって、規格化された伝搬長では、2倍の性能指数(フィギュア・オブ・メリット)となる。

実験に使われた超平滑単結晶金薄片は、サザンデンマーク大学ナノオプティクスセンタのN. Asger Mortensen教授が化学的に成長させた。

中赤外スペクトルは、センシングアプリケーションでは特に重要である。多くの重要な有機分子が中赤外に吸収ラインを持つからである。しかし、従来の検出法では、操作成功には多くの分子が必要になる。それに対して超圧縮フォトン-ポラリトン場は、顕微レベルで強力な光と物質の相互作用を提供できるので、検出限界は単一分子までに改善される。単結晶金のHIP長寿命は、検出性能をさらに改善する。

さらに、Jang教授のチームによる研究は、HIPとイメージグラフェンプラズモンとの間の顕著な類似性を実証した。両方のイメージモードは、一段と閉込めのつよい電磁界であるが、その寿命は、より短いポラリトン波長の影響を受けていない。この観察は、イメージポラリトン一般についてより広い展望を与え、誘電体基板のワンデルワールス結晶における従来の低次ポラリトンと比較して、ナノライト導波では、イメージポラリトンの優位性を際立たせている。

「われわれの研究は、イメージポラリトンの利点を実証した、特にイメージフォノン-ポラリトンだ。これらの光モードは、将来オプトエレクトロニックデバイスに使える。低損失伝播と強力な光-物質の相互作用が必要なところである。われわれの成果が、メタサーフェス、光スイッチ、センサ、赤外周波数で動作する他のアプリケーションなど、より効率的なナノフォトニックデバイスの実現に道を開くと期待している」(Jang)。
(詳細は、https://news.kaist.ac.kr)