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Fraunhofer IZM、空間で精密位置決めに中空コアファイバ

September, 15, 2022, Berlin--自動運転車、自律飛行が可能になるのは、搭載エレクトロニクスが空間的、時間的にそれらの位置を信頼できる精度で確定できる場合のみである。航空分野では、この仕事は、光ジャイロに託されている。飛行中の物体のコースをチェックし、安定化するために光を計測する。しかし、そのようなジャイロは、ある物質的特性、あるいは電場、磁場の影響を受け、その結果は、悲惨になり得る。ドイツ-ポーランド研究コンソーシアムが共同で、ジャイロが干渉の影響を受けないように光を伝送する信頼できる手段を開発する理由は、これである。その秘密は、中空コアファイバである。

 ファイバオプティクスは、現代の通信のバックボーンを形成する。
 計測技術も光ファイバの機能を利用する。ジャイロスコープの根本部分は、高精度回転センサである。運動の1軸だけが関与していれば、加速度センサは十分であるが、空間の3次元全てで動く自律的物体は、追跡を必要としており、計測システムは、もっと複雑になり、3つ加速度計とジャイロスコープを含んでいなければならない。

光ジャイロの限界
世界中を旅行するような回転を計測する光ジャイロを考える。移動の方向により、時間を失うか、時間を得るかのいずれかとなる。ファイバジャイロは、コイル状に巻いてリング共振器を形成するファイバを含んでいる。その共振器内で、光は時計回り、反時計回りに動くことができる。

物体が回転すると、光波が通過するパスがわずかに変化する、わずかな差で縮むか広がる。これは、ディテクタが拾い上げて回転の計算に利用するわずかな変化である。

しかし、これは光ファイバが、その能力の限界に突き当たるところである。磁場や電場がセンサの判読作業を邪魔する。また材料自体が光と相互作用し、その光学特性における変化の原因となる。これら、いわゆる非線形効果は、光の進行の仕方に直接影響を与える。干渉は、非常に小さいので、通信には何も問題はない。しかし、ナビゲートする自律的物体には極めて重要であることが分かっている。予想されるコースからのわずかな偏差が、選んだコースからの計測可能な偏差を意味するからである。

研究チームは、これらの効果を回避するために、Fraunhofer IZM研究所で最先端の技術と材料を研究してきた。チームは、有望な新しい候補を市場で見つけた、中空コアファイバである。

これらは、一般的な光ファイバと同様に細いが、ガラスコアの代わりに空気を含んでいる。光は、その空洞を何ものにも乱されることなく伝播する。これは、挙動を変える材料の効果を明確に低減する。光は、標準ファイバの1.5倍のスピードで材料を伝播するので、中空コアファイバは、データ伝送アプリケーションでも魅力的なオプションである。現在、中空コアファイバの採用拡大の障害になっているのが高価格である。

救済への賢いインタコネクト技術
Wojciech Lewoczko-Adamczyk とStefan Lenzkyのフォトニクス専門家の周囲の研究者には、課題は、高精度ジャイロスコープの構築のためにこれらファイバの破壊耐性特性を獲得し、同時に製造コストを下げることだった。その新しいファイバタイプとうまく機能するインタコネクト技術を見つける必要があった。1つの大きな課題は、光信号を複数のチャネルに分ける手段だった。一般に、個々の導波路は、単純にそれらを溶融することで結合されるが、中空コアファイバにはこれは不可能。熱に晒されると、その独特の構造が失われるからである。

この効果に対抗するために研究者は、微小コリメータを作製した。1つのファイバからの光を捉え、回折が起こる前にそれを放出する高精度レンズである。この重要なステップを通過することで光は、半反射ミラーによって分けられ、リング共振器に供給される。リングを一周した後、それは計測され、第2のコリメータからファイバに戻される。

SMEs向けのアセンブリプラットフォーム
光と2つのコリメータを結合するとき、高精度は不可欠である。ラボ環境では、コンポーネントは、精密位置決めツールで設置、位置合わせされるが、これらが産業製造サイトで利用されることは期待できない。つまり、SMEsは、これまでは、このようなプロセスに対処できなかった。ドイツ-ポーランとコンソーシアムがパッシブ結合プラットフォームを開発した理由はここにある。これによりその技術が個々のアプリケーションに組込可能となる。そのレイアウトにより、最終コリメータの精密フィッティングが可能になり、追加の位置決めが不要になる。

プロジェクトは、年末まで続く予定だが、研究チームは、すでに十分な進歩を達成している。コリメータは、ビームを曲げるためにまだ必要であるが、Fraunhofer IZMが作製した光コンポーネントは、すでに現行の市販ソリューションよりも精度が10倍優れており、最大屈折角は0.04°である。つまり、コリメータペアは、追加のアライメントなしで、パッシブ結合プラットフォームに使える、同時に結合効率は85%以上を達成している。プロジェクトの第3、最終年のミッションは、プラットフォームの信頼性テスト、より多くの光学的、機械的コンポーネントの追加、全てをジャイロスコープに収めることである。回転センサが構築されると、全てが、その技術の実際の条件下でのフィールドテスト準備完了となる。

コリメータアセンブリプラットフォームは、航空機や衛星向けの光ジャイロスコープの破壊耐性を高める。しかし、それは集積光学システムヘのハイブリット追加となる。例えば、自由ビーム結合を必要とする光学素子を使うシステムである。導波路から出る散乱光は、コリメートされて、次の導波路に入る際の損失が減る。その光学ソリューションは、超高強度光ビームでの材料加工、赤外あるいは短波UV光伝送にも関わる。他の有望なアプリケーションは、通信分野でも考えられる。

(詳細は、https://www.izm.fraunhofer.de)