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TU Wienとヘブライ大学、完全な「光トラップ」を実現

September, 7, 2022, Wien--TU Wienとヘブライ大学(Hebrew University of Jerusalem)で、光ビーム自体が逃れられなくする「光トラップ」が開発された。これにより、光は完全に吸収される。

「光トラップ」設定は、部分的に透明なミラー、薄く弱いアブソーバ、2枚の収束レンズ、全反射ミラーで構成されている。

光合成でも光起電力(PV)システムでも、光を効率的に利用したいなら、可能な限り光を完全に吸収しなければならない。しかし、薄い材料層で吸収が起こるなら、これは難しい。通常、光の大部分は透過させられるからである。

今回、TU Wienとヘブライ大学の研究チームが、最薄層でも光ビームが完全に吸収できる驚くべきトリックを見いだした。研究チームは、ミラーとレンズを使って、薄い層の周囲に「光トラップ」を構築した。そこでは、光ビームは、円の中で操作され、次にそれ自体に重ね合わされる。正に、光ビームが自らをブロックして、そのシステムから逃れられなくする。したがって、光は、その薄い層に吸収されるしかない、逃げ道はない。”Science”に発表された、この吸収-増幅法は、両チーム協働の成果である。そのアプローチは、ヘブライ大学のOri Katz教授が提案し、TU WienのStefan Rotter教授が概念化した。実験は、エルサレムのチームが行い、理論計算はウイーンのチームが行った。

薄い層は光に対して透明
「光の吸収は、それが固体に当たるときには簡単である。薄いブラックウールジャンパーは、簡単に光を吸収する。しかし多くの技術的アプリケーションでは、利用できる材料は薄い層しかなく、この層で光を的確に吸収するようにしたい」(Stefan Rotter)。

材料の吸収を改善する策はすでにあった。例えば、2枚のミラーの間に材料を置く。光は2つのミラーの間で前後に反射され、毎回材料を透過し、したがって吸収される見込はますます多くなる。しかし、この目的のためにはミラーは完全であってはならない。その一方が部分的に透明でなければむならない。そうでないと光は、2枚のミラー間の領域に全く浸透できない。しかし、この部分的に透明なミラーに光が当たるたびに光の一部が失われることになる。

光がそれ自体をブロックする
これを阻止するには、高度な方法で光の波の特性を利用することができる。「われわれのアプローチでは、波の干渉により全ての後方反射をキャンセルすることができる」(Ori Katz)。この問題に集中的に取り組んだTU WienのHelmut Hörnerは、「われわれの方法でも、光はまず部分的に透明なミラーに当たる。レーザビームをこのミラーに送ると、ビームは2つの部分に分かれる。大きい方が反射され、小さい部分がミラーを透過する」と説明している。

ミラーを透過する光のこの部分は、今度は吸収材料層を透過し、次にレンズと別のミラーにより部分的に透明なミラーに戻される。「重要な点は、このバスの長さと光学素子の位置が、戻ってくる光ビーム(およびミラー間の多重反射)が、最初のミラーで反射される光により正確に相殺されるように調整されていることでる」とヘブライ大学の院生、Yevgeny SlobodkinとGil Weinbergは説明している。両氏が、そのシステムを構築した。

2つの部分ビームが、光がそれ自体をブロックするように重なる、つまり部分的に透明なミラーだけが、光の大きな部分を実際に反射するが、この反射は、部分的に透明なミラーに戻る前にシステムを透過するビームの他の部分によって不可能にされる。

したがって、部分的に透明になるように使用されているミラーは、今度は入射レーザビームに対して完全に透明になる。これは、光の一方通行の道を作る。光ビームは、システムに入ることはできるが、もはや逃れることができない。これは、反射部分と円形システムにより誘導される部分との重ね合わせのためである。したがって光は吸収されるしかない。レーザビーム全体は、さもなければほとんどのビームを透過させることになる薄い層によって飲み込まれる。

ロバストな現象
「システムは、吸収したい波長に正確に調整されなければならない。しかし、その点を除けば、制限的な要件は全くない。レーザビームに特殊な形状は必要でなく、他の場所よりもある場所で強度が強くても構わない。ほぼ完璧な吸収が常に達成される」(Stefan Rotter)。

空気擾乱や温度変動でさえ、そのメカニズムには害にならない、これはヘブライ大学で行われた実験で見たとおりである。幅広いアプリケーションに有望なロバストな効果であることが証明されている、例えば、提案されたメカニズムは、地球の大気を通した伝送の間に歪められた光信号を完全捉えることにさえ適している。新しいアプローチは、弱い光源(遠くの星など)からの光波をディテクタに適切に供給するための非常に実用的な利用も可能である。
(詳細は、https://www.tuwien.at)