July, 8, 2022, Lausanne--EPFLのエンジニアチームは、不透明なレジンから光を使って数秒で物体を造る3Dプリンティング法を開発した。そのブレイクスルーは、バイオメディカル産業に、人工血管の作製など、有望なアプリケーションがある。
2017年、EPFLの工学部内、応用フォトニックデバイス研究所(LAPD)のエンジニアは、ほぼ瞬時に物体を製造できる3Dプリンタを設計した。今回、5年後、チームは、そのプリンティング装置と方法を改善し、不透明レジンでできた物体を製造可能にした。以前にはできなかったことである。
微小Yoda
EPFLの3Dプリンタは、世界最速のものの1つである。ほとんどの3Dプリンタは、積層造形として知られるプロセスで層ごとに材料を堆積することで機能するが、EPFLのものは容積法を利用する。LADP教授、Christophe Moserは、「われわれはレジンを容器に流し込み、それを回転させる。次に、様々な角度から容器に光を照射し、レジンで累積エネルギーが所与のレベルを超えたところではどこでもレジンを固化できる。それは非常に精密な方法であり、既存の3Dプリンティング技術と同じ分解能で物体を製造できる」と説明している。エンジニアの容積法は、どんな形状の物体にも適用できる。チームは、微小なYoda作ることでそれをテストすることを決めた。その像を作るのにかかった時間は20秒、従来の積層造形プロセスなら10分程度かかる。
材料の固化に光を利用
光線が、プラスチックに含まれる感光性化合物と相互作用することでレジンを固化することができる。「われわれの方法は、光がレジンを真っ直ぐ、漏れることなく透過する場合だけに機能する。今まで、われわれは常に透明レジンを使ったが、バイオメディカル産業で使用されている不透明の物体をプリントできるかどうかを知りたかった」とLAPDのポスドク、Antoine Bonifaceは、話している。
容積プロセスで不透明のレジンを使う場合の課題は、光が問題なく伝播しないことである。したがって、レジンの固化に必要なエネルギー量の蓄積が困難になる。「不透明レジンでは、プリントされた物体で分解能が大幅に低下した。したがって、われわれの3Dプリンタの利点を失うことなく、このレジンで物体を製造できるようなソリューションを考案しようとした」とLAPDのPh.D学生、Jorge Madrid-Wolffは、コメントしている。
コンピュータ計算の調整
エンジニアが見つけたソリューションは、実際、全く簡単だった。まず、ビデオカメラを使ってレジンを透過する光の軌跡を観察し、次にコンピュータ計算で光線の歪みを補正するようにコンピュータ計算を設計した。プリンタが、これらの計算を実行し、プリンタが動作するにしたがい光線を補正するようにプログラムした。これにより、レジンの固化に必要なエネルギー量が望むスポットに届けられることが確実になった。コンピュータ計算を調整することでエンジニアは、不透明レジンの物体を、透明レジンの場合とほぼ同じ精度でプリントすることができた、これは重要なブレイクスルーである。
LAPD法を使って、人工血管など、生体材料を3Dプリントすることができる。次のステップとして、エンジニアは複数の材料を同時プリントし、プリンタの分解能を1㎜の1/10から1µmに高めることを考えている。研究成果は、Advanced Scienceに発表された。
(詳細は、https://actu.epfl.ch)