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次世代フォトニクスに応用が期待される物質中の光学遷移過程

June, 27, 2022, 京都--京都大学と筑波大学の研究グループは、赤外のレーザパルスを半導体ナノ粒子に照射して生じる高次高調波強度のサイズ依存性を精密に測定することにより、固体における高次高調波の発生機構を明らかにした。
 近年、原子や分子ガスに赤外線レーザパルスを照射すると、その整数倍の振動数をもつ高次高調波が発生し、X線に至る高い振動数の光やアト秒(10-18秒)パルス光を作り出すことができるようになり、新たなフォトニクス技術が生まれようとしている。最近では、ガスから固体材料へと高次高調波発生の研究が発展し、ガスに比べて高い原子密度を有する固体を利用した高効率な高調波光源の開発が可能となり、また発生過程を利用した固体材料自身の新たな分析方法としての応用が期待されている。しかしこれまで、固体からの高次高調波の研究は、そのほとんどがバルク結晶を対象とし、その発生機構の理解は十分ではなかった。

 研究では、化学的な手法により精密にサイズ制御された半導体ナノ粒子(CdSe、CdS)からの高次高調波を測定し、直径が約2nmより大きくなるにつれて高調波強度が100倍程度増大することを発見した。これは、レーザ照射中に生じるバンド間の多光子吸収過程と生成された電子のレーザ電場による加速運動が同時に起こることによって生じることがわかった。
 この研究でレーザの光電場の周期という極めて短い時間内で固体中の電子運動を操作できることがわかり、高次高調波光の特性を制御する技術としてだけでなく、高精度なレーザ加工、レーザの光電場で電流を制御する強電場フォトニクス開発にもつながる重要な知見を与えるものである。

研究成果は、2022年6月23日に、国際学術誌「Nature Physics」にオンライン掲載された。

研究グループ
京都大学、金光義彦 化学研究所教授、廣理英基 同准教授、中川耕太郎 理学研究科博士後期課程学生、猿山雅亮 同特定准教授、寺西利治 同教授、佐藤駿丞 筑波大学助教らの研究グループ

(詳細は、https://www.kyoto-u.ac.jp)