September, 1, 2014, Berkeley--MX2として知られる2次元(2D)半導体により、グラフェンがハイテクの世界における次のオオモノの台座から滑り落ちるとする議論が出てきている。
米国エネルギー省(DOE)ローレンスバークリー国立研究所(バークリー研究所)の研究者をリーダーとする国際的な研究グループが、光励起MX2材料における超高速電荷移動を初めて実験的に観察したと報告している。記録された電荷移動時間は50フェムト秒(fs)以下で、有機太陽電池の最速時間に匹敵する。
「光発光マッピングと過渡吸収計測を統合することでMX2における効率的な電荷移動を初めて実証した」とフェン・ワン氏(Feng Wang)はコメントしている。同氏は、バークリー研究所材料科学部門、UCバークリー物理学部、凝縮材料物理学者。「電荷移動時間を定量的に50fs以下と判断したわれわれの研究で、MX2ヘテロ構造は、優れた電気的・光学的特性を持ち大面積合成への素早い展開ができることから、将来のフォトニック、オプトエレクトロニックアプリケーションで極めて有望であるあることを示唆している」。
MX2モノレイヤは、単層の遷移金属原子でできている。例えばモリブデン(Mo)あるいはタングステン(W)を硫黄(S)など、2層のカルコゲン原子で挟み、ヴァンデアワールス力(van der Waals force)として知られる比較的弱い分子間引力で結合されている。これら2D半導体は、グラフェンと同じ6角形「ハニカム」構造であり、超高速電気伝導度を特徴としているが、グラフェンと異なり、自然のエネルギーギャップがある。このため、トランジスタや他の電子デバイスへの応用が容易になる、つまりグラフェンと異なり、その電気伝導度は作動を切ることができるからだ。
「異なるMX2層を組み合わせることで物理特性を制御できる。例えば、MoS2とWS2との組合せで、高速電荷分離ができるタイプII半導体が形成される。光励起の電子とホールの分離は、フォトディテクタや太陽電池における電流駆動にとっては不可欠である」。
MoS2/WS2ヘテロ構造の薄い原子サンプルにおける超高速電荷分離の実証では、研究チームはフォトニクスやオプトエレクトロニクスだけでなく、太陽光発電(PV)でも潜在的に有望であることを示した。
「MX2半導体は極めて強い光吸収特性を持ち、有機PV材料に匹敵する結晶構造、さらに優れた電気輸送特性を持つ」とワン氏は言う。
研究チームは、MX2における電荷移動の微視的起源、異なるMX2材料間の電荷移動のバラツキを研究している。
「われわれは、PVデバイスでMX2ヘテロ構造を利用する手段として、外部電界による電荷移動過程の制御にも関心を持っている」とワン氏は話している。