April, 27, 2022, Berkeley--コンピュータは、どんどん小型化し、より強力になっていくが、オペレーションには膨大なエネルギーを必要とする。米国がコンピュータのために使う総エネルギー量は、過去10年で激増し、他の主要分野、運輸などのエネルギー量には急速に近づいている。
Natureに発表された研究でUC Berkeleyの研究者は、トランジスタコンポーネントの設計における大きなブレイクスルーを説明している。それは、スピード、サイズ、性能を犠牲にすることなく、そのエネルギー消費を大幅に減らすことができる。そのコンポーネント、ゲート酸化物は、トランジスタのON/OFFスイッチングで重要な役割を担う。
「われわれのゲート酸化物が、商用入手可能なトランジスタよりも優れていることを示すことができた。一兆ドル半導体産業が今日、できることを、われわれは根本的に打ち負かすことができる」とUC Berkeley、電気工学&コンピュータサイエンス、TSMC名誉教授、Sayeef Salahuddinは、コメントしている。
効率向上は、負性容量と言う効果で可能になっている。これは、材料に電荷を蓄えるために必要な電圧量の削減に役立つ。Salahuddinは、2008年に負性容量の存在を理論的に予言し、2011年に強誘電体結晶で、その効果を初めて実証した。
新しい研究は、酸化ハフニウムと酸化ジルコニアの層状スタックで構成される人工結晶で負性容量がどのように達成できるかを示している。これは、先進的シリコントランジスタとの互換性は問題ない。その材料をモデルトランジスタに組み込むことで研究は、負性容量効果がどのように、トランジスタ制御に必要な電圧量を大幅に下げられるかを実証している。結果として、コンピュータが消費するエネルギー量が下がる。
負性容量を実際の技術にする
負性容量は、所与の電荷達成のために必要な電圧量を減らすことでゲート酸化物のパフォーマンスを高めることができる。しかし、その効果は、どんな材料でも達成できるわけではない。負性容量を作るには、強誘電性という材料特性の注意深い操作が必要になる。これは、材料が自然発生の電界を示すときに起こる。以前、その効果は、ペロブスカイトという強誘電性材料でのみ達成されたが、その結晶構造は、シリコンとの適合性がない。
研究では、チームは、超格子という人工結晶構造で酸化ハフニウムと酸化ジルコニアを結合することでも達成できることを示した。これは、同時に強誘電性と反強誘電性につながる。
「われわれは、この組合せが、非常に優れた負性容量効果をもたらすことを確認した。この負性容量現象は、最初に考えていたよりも非常にブロードであることを示している。負性容量は、誘電体を備えた強誘電体の従来像では起こらない。これは、過去10年来研究されてきたことである。強誘電性と並んで反強誘電性を活用するこれらの結晶構造を設計することで、実際に効果を一段と強力にすることができる」と、UC Berkeleyのポスドク研究者、論文の共同筆頭著者、Suraj Cheemaは説明している。
研究チームは、酸化ハフニウムの2つの単原子層に挟まれた酸化ジルコニウムの3原子層、層厚2nm以下、で構成される超格子構造が最高の負性容量効果を示すことを確認した。ほとんどの最先端シリコントランジスタは、すでに、二酸化ケイ素上の酸化ハフニウムで構成される2nmゲート酸化物を使用しており、酸化ジルコニウムもシリコン技術で使用されているので、これらの超格子構造は、最先端のトランジスタに容易に組み込むことが可能である。
その超格子構造のゲート酸化物としてのパフォーマンスをテストするためにチームは、短チャネルトランジスタを作製し、その能力をテストした。これらのトランジスタに必要な電圧は約30%減となる見込である。既存のトランジスタと比較して、半導体産業のベンチマークを維持し、信頼性の損失は皆無である。
「この種の研究でよく見られる問題の1つは、材料で様々な現象を実証できるが、その材料が先進的コンピューティング材料に適合しないことである。したがって、その利点を実際の技術に持ち込めない。この研究は、学術的な負性容量を最先端のトランジスタで実際に使用できるものに移転する」とSalahuddinは、コメントしている。
(詳細は、https://news.berkeley.edu)