April, 15, 2022, NY--フォトカソードは、光を照射されると電子を放出する材料であり、世界一強力な粒子加速器の一部の性能にとって極めて重要である。
しかし、結晶特性がよくないためにフォトカソードは、その全潜在力をまだ実現していない。コーネルの研究チームは、この限界に取り組んでいる。
国立科学財団科学技術センタ、コーネルのCenter for Bright Beamsの研究チームは、以前のものよりも10倍効率を高めた単結晶アルカリアンチモン化合物フォトカソードを作る技術を開発した。
研究成果は、Physical Review Lettersに発表された。
最も効率的なフォトカソードは、アルカリアンチモン材料から作られる。様々な加速器に利用されるが、これらの材料は、まだその理論限界に達していない。結晶品質がよくないためである。これは空間的粗さとなり、放出ビームの品質劣化、究極的には、加速器性能の劣化になる。
加えて、それらは極めて反応性の高い材料から作られるので、成長と正確な特徴づけが難しくなる。
新しいフォトカソードの原子成分は、既存タイプのものと同じであるが、Jared Maxsonのグループは、わずか4nm厚で単結晶としてその材料を成長させることができた。これは既存材料よりも約10倍薄い。したがって、反応時間は約10倍高速である。
これにより、時間分解科学で10fsスケールの、前例のない短い電子パルスが可能になる。これは一般的な原子の動きよりも高速である。
「これら電子源材料は、アインシュタインの頃から存在する。アインシュタインのノーベル賞受賞研究は、これらのソースを利用する光電子効果を実際に説明している。それらは極めて効率的であり、多くの電子を放出するが、原子レベルでは、それらは完全に無秩序である、つまり、そのパフォーマンスに制限があることが分かっている」とMaxsonは説明している。
原子スケジュールでは、どんな欠陥でも放出電子の数を制限するだけでなく、信頼できない角度で電子が放出されるようになる。それらの内部で電子の秩序を維持しながらよ薄い材料を成長させたチームは、PARADIM(Platform for the Accelerated Realization, Analysis and Discovery of Interface Materials)のMBEシステムを利用し、シリコンカーバイド(SiC)基板上にわずか4nm厚のセシウムアンチモン単結晶層を堆積した。
この技術を使ってとチームは、一度にアルカリ金属の1原子層を「成長」させ、単結晶膜を作るために原子の方向を固定させた。
ビームは、そのフォトカソードで生じるが、電子ビームの輝度と全般的な有効性は、それがターゲットと相互作用する直前まで維持されなければならない。電子ビーム生成とトランスポートプロセス全体で制約を克服することでチームは、これまでになく高輝度の電子ビームを作ることができる。それらは、より強く集束されており、粒子加速器の性能を強化する。
Maxsonの研究室は、単に電子源を作っているのではない。そのソースの1つの特殊なアプリケーションを追求している。この技術は、これら高密度、高輝度ビームの極短パルスを使い、原子の動きのムービーを作る。1つ落とし穴がある。原子の動きは、1秒の1兆分の1のスケールで起こる。したがって、これらのビームが時間的に短く、サイズが小さいこと、この両方が重要である。
「多くの回折装置は、時間的に短いビームを作る。しかし、われわれは、それらを空間サイズで極端に小さくしようとしている。結果としてのビームは、短いだけでなく、実際に高密度である。それを達成できる唯一の方法は、非常に優れたフォトカソード、われわれが研究しているサンプルまで光源からのビームを純粋に輸送することである」(Maxson)。
Maxsonによると、優れたフォトカソードは、コーネルの超高速電子回折装置と組み合わせることで、科学界で未だ満たされていない要求を可能にする。
「世界中の材料科学界で開発されている多くの新材料は、シングルミクロンスケールで作ることが可能なだけである。われわれは、ビームを小さな空間スケールに詰め込んだ。これらの材料を時間分解電子線解析で見る能力を解放するためである。コーネルは、これまでに達成されたことのない方法でこの研究を推進している」(Maxson)。
(詳細は、https://news.cornell.edu)