April, 12, 2022, 仙台--電子顕微鏡は、ウイルスなどの微小物、半導体デバイスの微細構造、さらには物質の原子配列をも可視化できる観察ツール。こうした高い分解能を達成するには、探針となる電子ビームを、原子ひとつの大きさに匹敵する0.1nm以下にまで絞り込む必要がある。
東北大学 多元物質科学研究所の上杉祐貴助教らの研究グループは、これまで電場や磁場で構成されていた、電子ビーム集束用のレンズを、レーザなどの強力な光ビームによる「光場」で実現する、新しい手法を発案した。
この「光場電子レンズ」に対して、幾何光学に基づいた理論的な解析により、焦点距離や球面収差を導くための重要な基礎となる公式を整備した。これにより、誰でも容易に光場電子レンズを設計することが可能になる。また、光場電子レンズが従来のレンズでは実現できない「負」の球面収差を発生し、極小の電子ビームサイズを得るのに必要な、収差補正器としても利用できることを示した。構造が複雑で高価な従来の磁場を用いる収差補正装置を光場電子レンズで置き換えることで、高分解能の電子顕微鏡装置を広く普及できると期待される。
研究成果は、英国物理学会出版部門提供学術雑誌「Journal of Optics誌、特集する「Emerging Leaders Collectionに掲載された。
(詳細は、https://www.jst.go.jp/)