April, 4, 2022, Washington--コロラド大学(University of Colorado Boulder)の研究チームは、生きたマウスの脳内部の高解像度3D画像のために設計された微小顕微鏡を開発した。小型広視野顕微鏡で以前に可能だったよりも深く脳をイメージングすることで新しい軽量顕微鏡は、研究者が脳細胞や脳回路がどのように動作するかを理解する際に役立つ。
「さらなる開発によりわれわれの顕微鏡は、動物が自然環境で、あるいは様々なタスクを実行しているときに、神経活動を時間経過とともにイメージングすることができる」とコロラド大学、論文の主筆、Omkar Supekarは、コメントしている。「われわれは、多発性硬化症などの神経疾患で重要な役割を担う細胞を研究するために、それが使えることを示した」と同氏は説明している。
Biomedical Optics Expressに発表された論文で研究チームは、新しいSIMscope3Dを説明している。これは、サンプルがある光波長に触れた後、組織つまり、蛍光タグが発する蛍光を撮像する。その新しいデバイスは、構造化照明を使って焦点ズレや散乱光を除去する初の小型顕微鏡であり、これによりLED光源で、固定脳組織を260µm深部までイメージングできる。
「神経疾患の新しい治療を開発するには、細胞および回路レベルで脳を理解する必要がある。新しい光学イメージングツール、われわれのチームが開発した顕微鏡のように脳深部組織をイメージングできる顕微鏡は、この目標達成にとって重要である」とコロラド大学、Anschutz Medical Campus、研究チームリーダー、Emily Gibsonは、話している。
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ヘッドマウント顕微鏡は、小さな𪘂歯動物の脳を、その頭蓋にインプラントされた透明ウインドウを通してイメージングするために使用される。研究チームは以前に、ヘッドマウント広視野顕微鏡を開発したが、組織によって散乱される光のために、脳深部のイメージングかできなかった。微小2光子顕微鏡は、各焦点面の焦点ズレ光を除去することでこの欠点を克服することができる。光学セクショニングとして知られるプロセスである。しかし、一般に高価なバルスレーザと複雑な機械的スキャニングコンポーネントが必要になる。
新しい顕微鏡を設計するために研究チームは、他の部門の研究者と協力した。
立体イメージングは、空間的にパタン化された光をイメージングファイバを使って微小な顕微鏡対物レンズに供給することで達成された。このプロセスは、焦点ズレの光も除去し、2光子アプローチで達成されたものと同等の光学セクショニングを可能にするが、複雑なコンポーネント、高価なレーザは必要としない。
その顕微鏡は、コンパクトなチューナブルエレクトロウエッティングレンズを含む。これは、顕微鏡の焦点深度を変えることで、いかなる可動パーツも必要とせずに、脳構造の3D可視化わ可能にする。研究チームは、CMOSカメラを顕微鏡に直接組み込んだ。これは、横方向の高い解像度でイメージングを可能にする。同時に、画像がファイババンドルを進むことで誘発されるアーチファクトを回避する。LED光源を使い、その新しい顕微鏡は、高い散乱組織深くをイメージングする際にでも、鮮明なコントラストを生成できる。
グリア細胞を捉える
研究チームは、覚醒したマウス、その頭部を固定するデバイスに設置したマウスで、蛍光タンパク質でラベリングした希突起膠細胞と小膠細胞をイメージングすることで、その新しいシステムを実証した。多発性硬化症の人々では、軸索の周りに絶縁層を形成する希突起膠細胞が破壊される。これは、脳の接続の鈍化の原因となり、視覚、運運動技能の障害、他の問題につながる。
「われわれの微小顕微鏡を使って、120µmまでの脳深部で覚醒したマウスの時系列グリア細胞のダイナミクスを記録した。研究者は、これらの細胞がどのように機能するか、その修復過程を十分正確に理解していない。われわれの顕微鏡は、これらの細胞の移動や修復の仕方を長期に研究する可能性を開いてる」とSupekarは説明している。
研究チームは、現在、その顕微鏡の取得速度と重量の改善に取り組んでいる。わずかなアップグレートで、その顕微鏡は、マウスが様々なタスクを実行している間に、ニューロンの電気活動のような速いダイナミクスをイメージングできるようになる。研究チームによると、その顕微鏡は高価なコンポーネントを必要としないので、神経科学ラボで利用する商用システムの開発は容易である。