March, 30, 2022, Berkeley--UC Berkeley、バークリーセンサ&アクチュエータセンタの電気工学&コンピュータサイエンス教授、Ming Wuは、新しいタイプの高分解能LiDARチップを開発した。研究成果は、Natureに発表されている。
新開発のLiDARは、焦点面スイッチアレイ(FPSA)をベースにしている。これは、半導体ベースのマトリクス状のマイクロメートルスケールのアンテナで、デジタルカメラのセンサのように光を収集する。その分解能、16,384 ピクセルは、スマートフォンカメラの数100万ピクセルと比べると、優れているようには聞こえないが、今のところ、Wuによると、それはFPSAsの512ピクセルを小さく見せている。
同様に重要なことは、コンピュータプロセッサの製造に使われる同じCMOS技術を使うことで、その設計がメガピクセルサイズに拡張可能であることだ。これは、新しい世代の強力なローコスト3Dセンサになる。用途は、自律走行車、ドローン、ロボット、スマートフォンなど。
LiDARの問題点
LiDARは、レーザ照射の反射光を捉えることで機能する。光が戻るまでの時間、ビーム周波数の変化を計測することでLiDARは環境マップを作り、物体が動き回るスピードの時間を記録する。
機械的LiDARシステムは、数100ヤード離れた物体を暗闇でも可視化する強力なレーザを備えている。また、自動車のAIが、車輌、自転車、歩行者、他の危険物を区別するだけの高い分解能で3Dマップを生成する。
しかし、これらの機能を1つのチップに載せることで10年以上、研究者が窮地に立たされてきた。最も際立つ障害はレーザに関わる。
「非常に広い範囲を照射したい。しかし、そうしようとすると光は、弱くなりすぎて十分な距離に届かない。したがって、光強度を維持する設計トレードオフとして、レーザ光で照射する範囲を減らす」(Wu)。
そこが、FPSAが登場してきたところである。FPSAの構成は、マトリクス状の微小な光トランスミッタ、つまりアンテナと素早く光をON/OFFするスイッチ。こうして、FPSAは、単一のアンテナを通して全ての利用可能なレーザパワーを一度に流すことができる。
MEMSスイッチ
しかし、スイッチングは問題である。ほとんど全てのシリコンベースLiDARシステムは、熱光学スイッチを利用する。これは、大きな温度変化を利用して、屈折率の小さな変化を生み出し、1つの導波路から別の導波路へレーザ光を曲げ、方向を変えさせる。
しかし、熱光学スイッチは大きくて、消費電力が高い。1つのチップに多くを詰め込むと、熱の発生が多すぎて適切に動作しない。既存のFPSAsが、512ピクセル以下に制限されている理由は、これである。
Woのソリューションは、それらをMEMSスイッチで置き換える。これにより、導波路の位置を物理的に次々に動かす。
Wuによると、「構成は、フリーウエイのインターチェンジと非常によく似ている」。
MEMSスイッチは、通信ネットワークで光のルーティングに使用されている既知の技術。それらがLiDARに適用されたのは、これが初めてである。熱光学スイッチと比べて、MEMSスイッチは、遙かに小さく、省エネであり、高速で、光損失も非常に少ない。
1cm²チップに16,384ピクセルを詰め込むことができる理由はそこにある。スイッチがピクセルをONにすると、それは光ビームを放射し、反射光を捉える。各ピクセルが、アレイの70°視界の0.6°に相当する。アレイを素早く循環させることでFPSAは、周囲世界の3D画像を構築する。複数のFPSAsを円形構成に実装すると、車輌の周囲360°視界が生成される。
スマートフォンカメラのように
このシステムの商用化準備前に、FPSAの分解能と距離を伸ばす必要がある。「光アンテナを小さくするのは難しいが、スイッチは、まだ最大のコンポーネントであり、それらを大幅に小さくできるとわれわれは考えている」(Wu)。
同システムの距離はわずか10mなので、それをもっと伸ばす必要がある。「100m到達は確実に可能である。継続的な改善で300mに達すると考えている」(Wu)。
実現すると、従来のCMOS製造技術で未来の安価なチップサイズLiDAR部品製造が約束される。
(詳細は、https://engineering.berkeley.edu)