March, 3, 2022, 京都--京都大学、山下高廣 理学研究科講師、酒井佳寿美 同研究員、七田芳則 名誉教授(立命館大学客員教授)、今元泰 同准教授の研究グループは、眼の光センサタンパク質を改変して、多くの細胞で重要な働きをするcAMP(環状アデノシン一リン酸)の濃度を光で一過的に変化させられる分子ツールを新たに開発した。
cAMPは、多くの細胞において分化・生存・極性形成・ホルモン分泌など重要な機能を果たすことが知られている。そのため、細胞内のcAMP濃度を人為的に変化させることができれば、細胞の機能を自由に操作してその重要性を明らかにすることができる。眼の中で視覚に働く光センサタンパク質であるロドプシンは、光で細胞内のcAMP濃度変化を誘導できることが知られていた。そのため、細胞に直接触れることなく光を使ってcAMP濃度を変えることができる低侵襲的な操作ツールとなり得る。しかし、視覚ロドプシンを用いた場合には、光によるcAMP濃度変化が比較的長く続き、短時間で繰り返しの応答を誘導することが難しい、などの課題もあった。
研究グループは、これまでに蓄積した種々の光センサタンパク質の知見に基づいて、視覚ロドプシンにアミノ酸変異を加えることにより、cAMP濃度変化を短時間で一過的に起こすことのできる光センサ分子の作製に成功した。また、さらなる変異によりcAMP濃度変化を起こす時間を変えられることもわかった。眼の光センサタンパク質を眼以外の細胞で利便性よく活用できるように改変した新たな分子ツールとしての応用が期待できる。
研究成果は、2022年2月25日に、国際学術誌「eLife」にオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.kyoto-u.ac.jp)