December, 28, 2021, 東京--東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻の井上悟特任研究員、長谷川達生 教授、理化学研究所 放射光科学研究センターの米倉功治グループディレクターらは、分子配列の秩序と乱れが共存した高性能な液晶性有機半導体を開発し、その極薄膜が液晶凍結状態であることを、クライオ電子顕微鏡を用いた電子線結晶構造解析により捉えることに成功した。
液晶は、棒状分子の長軸(長手方向)の配向秩序と横方向の配列の乱れが共存した固体と液体の中間状態で、多種の分子材料で発現し、それらの特有な分子の配向性が液晶表示素子として幅広く利用されている。近年、類似の棒状分子により高性能な有機半導体が得られ、またこれらの多くが高温で液晶相に変化することが明らかとなっており、液晶が持つ優れた機能を有機半導体の高度化のために積極的に活用する研究が注目されている。しかし、これら半導体のデバイス性能は液晶状態では著しく低下することが課題となっていた。
研究では、有機半導体分子の置換基に多彩な制御を施す高度な分子設計をもとに、高性能な液晶性有機半導体の開発に成功した。さらに、得られた液晶性有機半導体の内部で分子配列の秩序と乱れが共存する様子を、最先端のクライオ電子顕微鏡を用いた電子線構造解析技術により捉えることに成功した。
この研究により、柔らかな液晶状態において高いデバイス性能を示す有機半導体を用いた、新たなソフトマターエレクトロニクスへの展開が期待される。
研究成果は、2021年12月22日(米国東部時間)に米国科学誌Chemistry of Materialsオンライン版に掲載された。
(詳細は、https://www.t.u-tokyo.ac.jp)