December, 16, 2021, 沖縄--ハイブリッドペロブスカイトは、有機イオンと無機イオンの両方で構成されている。これは次世代太陽電池の材料として有望な候補であり、現在利用されている従来の半導体材料よりも費用対効果が高く、容易に大量生産ができる可能性がある。
しかし、実用化のためには、ハイブリッドペロブスカイトの効率を向上させ、限界を正しく理解する必要がある。沖縄科学技術大学院大学(OIST)のケシャヴ・ダニ准教授が率いるフェムト秒分光法ユニットと、ケンブリッジ大学のサム・ストランクス博士率いるOptoelectronics Materials and Device Spectroscopy Groupの研究チームは、最先端のペロブスカイト薄膜内に3種類の欠陥クラスターを特定した、とEnergy & Environmental Science誌に発表した。同欠陥は、ペロブスカイトの製造過程で生じると考えられ、効率を制限する可能性がある。
「材料の中に欠陥があると、電子正孔対の生成や電気接点への移動に影響を与え、ペロブスカイト太陽電池の効率が低下する可能性がある。現在、ハイブリッドペロブスカイトの通常の出力は、20%から25%程度」としつつ、研究チームは、さらに、「ペロブスカイト太陽電池は理論上、入射光の約30%を電気に変換できる」と説明している。
同分野の専門家は、効率を制限する可能性のある欠陥の存在は認識していたが、全欠陥が同じ特性を持っているのかどうか、それらが全て単一の方法で除去可能かどうかは、これまで明らかになっていなかった。この研究では、最新装置を用いて欠陥をナノスケールの解像度で画像化し、その特性を調査することで3種類の欠陥があることを明らかにした。
研究チームが発見した最も有害な種類の欠陥は、結晶粒界の欠陥で、ペロブスカイトの結晶粒の境界に存在する微小な欠陥。これらの欠陥では、光によって生成された正孔が多く捕獲され、欠陥部分よりもはるかに広い領域で効率を低下させるとみられ、ペロブスカイトの性能に大きな悪影響を及ぼす。
次に、ポリタイプ(結晶多形)の欠陥がある。これは、前駆体材料が結晶化する際に、典型的な立方体のペロブスカイト構造ではなく、六方晶の構造になることによって発生する。同タイプの欠陥クラスターは比較的大きく、光によって生成された正孔を捕獲することで効率に悪影響を及ぼす。
最後が、ヨウ化鉛の欠陥。これは、ペロブスカイト材料の製造時に使用される重要な材料であるヨウ化鉛が析出したものである。しかし、研究結果によると、ペロブスカイトの電荷を捕獲する効果は軽度であり、効率への影響はほとんどないと考えられた。
研究チームは、ペロブスカイトの欠陥密度を下げるためにしばしば行われる光と酸素による処置を行い、欠陥に対する効果を調べた。ペロブスカイトを可視光とごく少量の酸素を含む雰囲気に晒した結果、欠陥にもたらす効果が異なることが分かった。最も有害な結晶粒界の欠陥には効果が表れ、正孔の捕獲が収まったが、別の種類の欠陥に対する効果は比較的小さく、有効とは言えなかった。
「今回の研究では、ペロブスカイト太陽電池の性能を向上させるためには、各種類の欠陥が及ぼす悪影響に対して、それぞれに特化したアプローチが必要であることが分かった」とダニ准教授は結論づけている。
(詳細は、https://www.oist.jp)