December, 3, 2021, Washington/Haifa--イスラエル工科大学)(Technion – Israel Institute of Technologyの研究者は、大量の硬化性液体ポリマを成形することで自由形状の光コンポーネントを作製する方法を開発した。その新方法は、様々なアプリケーション向けに特注光コンポーネントの迅速プロトタイピングを可能にすると見られている。矯正レンズ、AR/VR、自律走行車、医療イメージングや天文学向けのコンポーネントである。
メガネ、カメラなどの一般的なデバイスはレンズに依存している。球面あるいは円筒面の光コンポーネント、あるいはそのような形状からわすがに逸脱した光コンポーネントである。しかし、さらに進んだ光学機能は、複雑なトポグラフィを備えた表面から得られる。現在、そのような自由形状のオプティクスの製造は非常に難しく、高価である。機械加工および表面研磨のために必要な特殊な装置のためである。
Technion、イスラエル工科大学の研究チームリーダー、Moran Bercoviciは、「自由形状オプティクスを造るわれわれのアプローチは、極めて滑らかな表面を達成し、ほとんどの研究室にある基本的な装置を用いて実行できる。このため、その技術は極めて利用しやすく、リソースが少なくても利用可能である」とコメントしている。
Optica誌で、研究チームは、その新技術を使って、わずか数分でサブナノメートルの表面粗さの自由形状コンポーネントを製造できることを示している。3Dプリンティングなど、他のプロトタイピング法と違い、製造されるコンポーネントが大きくなっても、製造時間は短いままである。
メガネから複雑なオプティクスへ
世界中で25億人の人々が矯正メガネを利用できないでいることを知って研究チームは、新しい方法の開発を決意した。「われわれは、高品質の光コンポーネントを造る簡単な方法を見つけ出そうとした。機械加工、複雑で高価なインフラストラクチャに依存しない製造法である。さらにわれわれは、われわれの方法を拡張して、遙かに複雑で興味深い光トポロジーを造れることを発見した」とValeri Frumkinは話している。同氏は、Bercovici研究室で、最初にその方法を開発した。
液体ポリマを硬化させてオプティクスを造る際の主要な課題の一つは、オプティクスが約2㎜以上になると、重力が表面力を支配することである。そのため液体は、平坦化し、水たまりになる。これを克服するためにチームは、別の液体に沈んだ液体ポリマを使うことでレンズを製造する方法を開発した。その浮力が、重力に対抗し、表面張力が優勢になる。
重力を関係なくすることで研究チームは、レンズ液体の表面トポロジーを制御して滑らかな光学面を造ることができた。これは、レンズ液を支持フレームに注入する必要がある。レンズ液がフレーム内部を湿らせ、安定した構造に落ち着くようにするためである。要求されたトポロジーが達成されると、レンズ液はUV露光、他の方法で固化され、製造工程が完了する。
簡単な球レンズ作製のために液体製法を利用した後、チームは、環状体、三つ葉型を含む様々な形状、最大サイズ200㎜に光コンポーネントを拡張した。結果としてのレンズが、現在利用可能な最高の研磨技術と同等の表面品質であることを示している。また、製造は桁違いに高速で簡素である。論文では、研究チームは、支持フレームの形状を変更することで、自由形状面を造るようにその方法を拡張している。
無限の可能性
「われわれのアプローチを使って製造できる可能な光トポグラフィの範囲は無限であると判断した」と論文の筆頭著者、Mor Elgarisiはコメントしている。「その方法は、どんなサイズのコンポーネントの作製にも使える。また、液面は、自然な滑らかさであるので、研磨は不要である。そのアプローチは、固化できるどんな液体にも適合可能である。また、無駄がないという利点がある」。
現在、研究チームは、様々な光トポグラフィが正確かつ反復的に製造できるように、そのプロセスの自動化に取り組んでいる。また、とれが最良の光コンポーネントを造れるかを見つけるために様々な光ポリマで実験している。
(詳細は、Paper: M. Elgarisi, V. Frumkin, O. Luria, M. Bercovici, “Fabrication of freeform optical components by fluidic shaping,” Optica, 8, 11, 1501-1506 (2021).
DOI: 10.1364/OPTICA.438763.)