December, 2, 2021, Cambridge--ギガヘルツ域のオンチップ周波数シフタは、次世代量子コンピュータやネットワークに使われる可能性がある。
偏光、空間位置、到着時間を含むフォトンの特性を正確に制御、変更できることは、われわれが今日利用しているインターネットを含む幅広い範囲の通信技術の元である。次世代のフォトニック技術、フォトニック量子ネットワークやコンピュータは、フォトンの特性へのさらなる強い制御さえ必要としている。
変更が最も難しい特性の一つがフォトンの色、つまりその周波数である。フォトンの周波数を変えるとは、そのエネルギーを変えることを意味するからである。
ハーバードJohnA. Paulson SEASの研究者は、ギガヘルツ(GHz)周波数域で光を変換できる極めて効率的なオンチップ周波数シフタを開発した。その周波数シフタは、連続的、シングルトーンマイクロ波を使って簡単に制御される。
研究成果は、Natureに発表された。
電気工学Tiantsai Lin教授、論文のシニアオーサ、Marko Lončarは、「われわれの周波数シフタは、高速、大規模な古典的システム、新興のフォトニック量子コンピュータの基本的構成要素になる」とコメントしている。
論文は、2つのタイプのオンチップ周波数シフタを説明している。一つは、数十GHzシフトを使い一つの色を他の色に変換できる、もう1つはマルチシフトをつなげ、100GHz以上のシフトである。
各デバイスは、Lončarのラボで、同氏によって開発されたリチウムナイオベート(LN)プラットフォームに作製されている。
LNは、電子信号を光信号に効率よく変換できるが、その分野では長年、小さなスケールでの機能は難しいとか考える人が多かった。以前の研究では、Lončarのチームは、薄いLN膜にマイクロ共振器を物理的に作製するために、標準プラズマエッチングを使って、高性能LNマイクロ構造を作る技術を実証した。
ここでは、同じ技術を使い、研究チームは、薄膜LNに、結合リング共振器と導波路をエッチングした。最初のデバイスでは、2つの結合共振器が、8の字のような構造を形成している。入力光は、導波路から8の字パタンの共振器を通過し、1つの色として入り、別の色として出る。このデバイスは、約90%の効率で28GHz周波数シフトする。それは、チューナブル周波数ドメインビームシフタとしても再構成可能であり、一つの周波数のビームがもう1つの周波数の2つのビームに分離される。
第2のデバイスは、3つの結合共振器を使う。小さなリング共振器、レーストラック共振器と言う長い楕円の共振器、長方形共振器。レーストラック共振器の周りで光がスピードを速め、カスケードでますます周波数が速くなり、120GHzのシフトになる。
「われわれは、ただ一つの30GHzマイクロ波信号を使ってこの大きさの周波数シフトを達成できる。これは全く新しいタイプのフォトニックデバイスである。100GHz以上に周波数をシフトする以前の試行は、極めて難しく、高価であり、同等の大きなマイクロ波信号を必要とした」と論文の筆頭著者、SEASの研究アシスタント、Yaowen Huは話している。
「この研究は、集積LNフォトニクスにおけるわれわれの以前の開発の全てによって可能になったものである。効率的、コンパクト、スケーラブルな方法で、周波数ドメインにおける情報処理できることは、量子コンピューティング、通信、レーダー、光信号処理および分光法を含む大規模フォトニック回路に対する高価な、リソース要件を大幅に軽減できる」とLončarはコメントしている。
(詳細は、https://www.seas.harvard.edu)