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ピコ秒レーザによるコンシューマデバイスの切断と接合加工

November, 8, 2021, 東京--調査会社のレポートによると、OLEDは、TVのディスプレイだけでなく、スマートフォンやAR/VRデバイスにはマイクロディスプレイとして採用されている。また、グリーンOLEDマイクロディスプレイ・オン・シリコンの開発も進んでおり、いずれAR向け超高輝度HDRマイクロディスプレイが市場に登場する。
 これらコンシューマデバイスの製造では、加工技術が重要な役割を担っている。
 スペクトラフィジックス社によると、この領域でピコ秒レーザによる加工が注目されている。
 以下では、アプリケーションに即して、同社のピコ秒レーザIceFyreの特徴を簡単に見ておこう。詳細は、同社のアプリケーションノート(参考文献)で知ることができるが、同社は先月にウェビナーを開催したが、その中での産業・OEM事業部、谷本氏の説明も参考にしている。

IceFyreのランナップ
 Spectra-Physicsピコ秒レーザIceFyreは、ランナップが現在、以下の3モデル。
・IceFyre 1064-50
高性能、コンパクト、IR
>50W(125mJ) @400kHz
・IceFyre 355-30
高性能、コンパクト、UV
>30W(60µJ)ティピカル@500kHz、長いUV寿命>20k時間
・IceFyre 355-50
最高パワーとシングルショットから10MHzまでの調整可能繰り返しレート、UV、10psパルス幅、平均出力>50W(40µJ)@1250kHz、長いUV寿命>20k時間、業界最小タイミングジッタ

 特筆すべき製品の特徴としては、TimeShift psソフトウエア利用によるバーストパルスデザインが挙げられる。周期的パルスを複数のパルス群として出射する機能である。この機能により、シングルパルス加工と比べると高品質、高スループット加工が可能になる。同社では、この機能について「バーストパルスの周波数が自由に設定可能、バースト形状がプログラマブル。バーストパルスを構成するサブパルス数、1サブパルスごとのピークパワー、サブパルス間の時間間隔も任意設定可能(業界最小水準)。バーストのパルス数を任意に設定可能。簡単に言い換えると、パルス・オン・デマンド(POD)、位置同期出力(PSO)トリガリングである。なお、バースト時もフルパワー出力が可能である」と説明している。

モバイルディスプレイ機器用ディスプレイ製造
 折り畳み可能電話など、次世代コンシューマ電子デバイスに使用されるフレキシブルOLEDディスプレイの構造はメーカーによって異なる。各製品で比較的共通の構造は、表面からカバーウインドウ、タッチセンサ、偏光板、ディスプレイの複層構造である。
 カバーウインドウで採用される材料、構造例としては、クリアポリイミド(PI)、ハードコート(HC)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)+感圧アドヒーシブ(PSA)。
 これらの加工では、同社はIceFyre 355-50を使用し、プロセスを最適化した結果を紹介している(1)
 レーザは、最大40µJのエネルギーを持つパルスを最大1.25MHzで出射可能であり、それより低いパルスエネルギーでは、最大10MHzでのパルス出射が可能なので、高スループット要求に対応可能である。
 スループット(Clear PI)への最適化では、「下層の加工を考慮して、加工溝の深さと幅を追求。より高いフルエンスを許容、1.75MHz、1.5㎜デフォーカスが最適であるとの結果を得た」と同社では説明している。
 品質(HC)への最適化では、「低エネルギー、高PRF、高パルスオーバーラップを大幅に増やすことで、高品質プロセス成功した」。

 フルカット、Clear PI+HC+PET(プロテクト層)では、「最終的な切断プロセスですぐれた品質を実現した」としている。その詳細については、同社は以下の点を挙げている。
・切断速度>400㎜/s、同程度の厚さの他のポリマスタックと比較して、同等またはやや良好
・エッジの熱影響部(HAZ)で10µm未満、最も厳しいHC層で5µm未満
・断面観察では、溶融、焼け、ラミネーションなし

折りたたみ式携帯電話用超薄板ガラス切断 
 ここでは、厚さ100µm、コーニングWillowガラスをIceFyre 1064-50で100㎜/s(2×パルスバースト)でスキャンして切断。その評価について同社産業OEM営業部では、次のようにまとめている。

・ブレーク前とブレーク後の入射側写真では、均一な改質と低いエッジチッピングが見られる(出口面も同様品質)。
・サイドウォール断面写真では、ガラス全面に均一な開発が施され、粗さRaが0.1µm以下になっている。

ガラスのマイクロ溶接 
 ガラス接合アプリケーション、レーザを使う利点について、同社では次のように紹介している。
 医療機器、lab-on-a-chip、小型光学機器アセンブリ、民生用機器などで、接着剤を使わないガラスとガラス、ガラスと他材料との接合が必要になる。
・接着剤での接合の課題としては、アウトガス/コンタミネーション、硬化時間、自動化の課題(ディスペンサ管理)がある。
・接着剤を使わないレーザマイクロ溶接では、局所的加熱、追加材料不要、複雑な溶接の形状にも柔軟に対応可能である。

 ガラス-ガラスのマイクロ溶接で、IceFyre 1064-50を使用した結果を同社は以下のようにまとめている。
・トップダウンビュー、内側の改質が強く外側の改質が弱い、30µm内側、80µm外側
・周期的な周波数の変調、パルスの空間的なピッチ、プラズマ/メルトの形成にともなうフィードック効果
・断面(エポキシ封止と研磨):涙型の溶接部の位置でガラスの界面が消失

ガラスとアルミのマイクロ溶接
 アルミの上にガラスを重ね、ガラス側からレーザ照射、IceFyre 1064-50を使用、25㎜×数㎜にスキャン、右から左、左から右にスキャン。その結果については、以下のようにまとめられている。
・上から見た暗視野映像では、アルミニウムとガラスの界面に溶接部か暗い線で表示されている
・目に見えるひび割れはない
・溶接断面はほぼ三角形、溶接アルミニウムがガラスに入り、ガラスと融合
・境界面での検出可能なギャツプがない、ガラスとアルミの間で溶融物の流出がない

 なお、ガラス-ガラス接合とガラス-アルミニウム接合の違いについて、 スペクトラフィジックス社のアプリケーションノートの説明は以下の通り。
 「ベストリザルトのためのパラメタは、ガラス-ガラスとガラス-アルミ溶接では著しく異なる。ガラス-ガラス溶接は、非常に高い繰り返しレート、非常に高いオーバーラップ加工の恩恵を受けた。結果としての溶接は規則的であり、加工後のクラッキングや分離はなかった」。
 「ガラスとアルミニウムは、ガラスとガラスの場合と同じスピードで加工されるが、パルス繰り返しレートは大幅に低い。ガラス-ガラス溶接と比較して、アルミ表面におけるより大きな吸収に起因するクラックや分離を避けるために、パワーも下げた」(2)
 新技術には、新しい材料や加工技術が必要にあることが多々ある。ここでは、折り畳みディスプレイに関連する同社の加工技術を紹介した。

図1  IceFyreピコ秒レーザ IceFyre 355-50は、市場で最も高性能なピコ秒UVレーザでパルス幅は10ps。バーストモードにおいて数 で>50WのUV出力を提供。IceFyre 355-50はその高出力とシングルショットから10MHzまでの繰返し周波数の新しいスタンダードを提供(同社、製品説明)。

図1  IceFyreピコ秒レーザ
IceFyre 355-50は、市場で最も高性能なピコ秒UVレーザでパルス幅は10ps。バーストモードにおいて数
で>50WのUV出力を提供。IceFyre 355-50はその高出力とシングルショットから10MHzまでの繰返し周波数の新しいスタンダードを提供(同社、製品説明)。

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参考文献
(1)アプリケーションノート NEW FOLDABLE OLED DISPLAY MATERIALS CUT WITH PICOSECOND UV LASER
(2)アプリケーションノート Glass Micro-Welding with Picosecond Lasers