November, 1, 2021, 東京--東京工業大学 理学院 化学系の玉置悠祐助教、入倉茉里大学院生(研究当時)および石谷治教授は、新たに合成したオスミウム錯体を用い、従来は利用不可能であった近赤外線を含む可視光の全波長領域を利用しながら二酸化炭素を還元できる光増感剤を開発した。太陽光をより有効に活用しながら二酸化炭素を資源化する新たな光触媒システムの創出に成功した。
今回、中心金属であるオスミウムに結合する有機分子(配位子)を工夫することにより新たに合成されたオスミウム錯体は、光増感剤として励起する際、励起三重項状態へ直接遷移するS-T吸収を行うことが可能な性質を持つ。そのため可視光をすべて吸収でき、生じる光励起状態の寿命が比較的長く、優れた還元力を示すという、レドックス光増感剤として多くの優れた性能を有していることが確認できた。さらに、このオスミウム錯体をルテニウム錯体触媒と組み合わせて用いることで、可視光のどの波長を照射した場合でも光触媒反応が進行し、二酸化炭素を水素の貯蔵物質や化学原料として有用なギ酸へと還元できることも明らかになった。このオスミウム錯体を用いることにより、これまで利用できなかった長波長領域も含め、太陽光のエネルギーをより有効に利用した人工光合成システムの開発が可能となる。
研究成果は、9月28日に英国王立化学会誌「Chemical Science」速報版に掲載された。
(詳細は、https://www.titech.ac.jp)