October, 19, 2021, 和光--理化学研究所(理研)放射光科学研究センタービームライン研究開発グループビームライン開発チームの井上伊知郎研究員、矢橋牧名グループディレクター、高輝度光科学研究センターXFEL利用研究推進室先端光源利用研究グループ実験技術開発チームの犬伏雄一主幹研究員、電気通信大学レーザ新世代研究センターの米田仁紀教授らの共同研究グループは、内殻電子を失った原子(ホロー原子)を利用した「非線形光学効果」によって、X線自由電子レーザ(XFEL)施設「SACLA」から出射されたX線レーザの時間幅(パルス幅)を短くすることに成功した。
研究成果は、X線領域における初めての実用的な非線形光学素子の実現を示すものであり、XFELのパルス幅の自在な制御やアト秒(10-18秒、100京分の1秒)X線光源の開発への応用が期待できる。
今回、共同研究グループは、集光したX線パルスを厚さ10マイクロメートル(µm)の銅の薄膜に照射することで、パルスの前半部分で銅の原子をホロー原子へと変化させ、パルスの後半部分ではホロー原子を通過する状況を作り出した。通常の原子とホロー原子とではX線の吸収のされ方が大きく異なるため、銅の薄膜を通過後のX線のパルス幅は通過前のパルス幅よりも短くなることが期待される。実際に、通過前後のX線のパルス幅をそれぞれ計測した結果、通過後のパルス幅が約35%短縮されていることを確認した。さらに、シミュレーションにより、薄膜の厚みやX線強度を変えることで、XFELのパルス幅を自在に制御できることを示した。
研究成果は、科学雑誌『Physical Review Letters』オンライン版に掲載された。
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