October, 15, 2021, Vienna--3次元(3D)ナノネットワークは、最新の固体物理学の新時代を約束する。アプリケーションは多く、フォトニクス、生体医学、スピントロニクスなど。
3D磁気ナノアーキテクチャの実現により、超高速、低エネルギーデータ蓄積デバイスが可能になる。これらのシステムで競合する磁気相互作用により、磁荷あるいは磁気モノポールが出現。これは、モバイル、バイナリー情報キャリアとして利用できる。ウイーン大学の研究チームは、自由になった磁荷をホストする初の3D人工スピンアイス格子を設計した。npj Computational Materialsに発表された成果は、新しい格子で、磁気モノポールが室温で安定し、外部磁界によりオンデマンド操作が可能であることを初めて理論的証明を示している。
新しい磁気モノポールは、スピンアイスという磁気材料クラスで観察される。しかし、原子スケールと、安定性に必要な低温が、その制御性の制約となっている。このため、2D人工スピンアイスの開発に帰着する。そこで単一原子モメントが様々な格子に配置された磁気ナノアイランドによって置き換えられる。そのアップスケーリングにより、利用しやすいプラットフォームで、新興の磁気モノポールの研究が可能になった。特殊なナノアイランドの磁気配向を反転させることは、そのモノポールをさらに1つの頂点に広げ、後に痕跡を残す。この痕跡、Dirac Stringsは、必然的にエネルギーを蓄積し、モノポールを結合し、その運動を制限する。ウィーン大学Dieter Suesをリーダーとする、Sabri Koraltan とFlorian Slanovc周辺の研究者は、今回、初の3D人工スピンアイス格子を設計した。これは、原子および2D人工スピンアイスの両方の利点を結合したものである。
ウィーン大学ナノマグネティズム、マグノミニクスグループ、米国ロスアラモス国立研究所の理論部門と協働し、マイクロマグネティックシミュレーションを利用してその新しい格子の利点が研究された。ここでは、フラット2Dナノアイランドが、磁気回転楕円体で置き換えられ、高対称性3D格子が用いられている。「基底状態の縮退によりディラックストリングのテンションが消滅し、磁気モノポールを解放する」と研究の筆頭著者の一人、Sabri Koraltanは話している。チームは、その研究をさらに次の段階へ進めた。チームのシミュレーションでは、外部磁界を印可することで、一つの磁気モノポールが格子を伝搬し、3D磁気ナノネットワークにおける情報キャリアとしてのその応用を実証した。
Sabri Koraltanは「われわれは、新しい格子における3次元および高対称性を利用して、磁気モノポールを解放し、それらを望む方向へ移動させる、ほぼ本当の電子のようである」と付け加えている。また、Florian Slanoveは、「室温付近およびそれ以上でモノポールの熱安定性が3Dストレージ技術の画期的な、新たな実現の基盤となった」と結論づけている。
(詳細は、https://news.univie.ac.at)