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セルロースナノファイバの切り紙フィルムで効果的な放熱を実現

September, 30, 2021, 大阪--大阪大学産業科学研究所の上谷幸治郎助教、大分工業高等専門学校の常安翔太助教、東京工芸大学工学研究科の佐藤利文教授らの研究グループは、切り紙加工を施したセルロースナノファイバー製フィルムが、空気対流によって放熱する柔軟な冷却システムとして活用可能であることを初めて明らかにした。

従来の金属製ヒートシンクを用いた対流式冷却システムは、素材や寸法の制約が大きく、放熱性と小型化・柔軟性を両立させた次世代スマート・エレクトロニクスの要求に応えることが困難だった。
 今回、上谷助教らの研究グループは、熱伝導性の比較的高いホヤ殻由来のセルロースナノファイバ製フィルムを用いて、切り紙と対流放熱による柔軟な冷却システムを提案した。切り紙で作った「網飾り」パターンを延伸展開し、その開口部から秒速3.0 mで空気を対流させると、熱抵抗が約1/5に大きく減少し、切り紙と対流がない場合に比べて放熱性が大幅に高まることを実証した。また、高輝度化に伴う発熱量増加が問題視される無機電界発光(EL)素子に対して、切り紙加工と空気対流を施すことで、発光中でも体温と同程度まで冷却されることを初めて実証した。

この切り紙による放熱コンセプトは、様々なフィルム素材を形状可変の冷却構造として利用することを可能とし、次世代ペーパーエレクトロニクス等への幅広い活用が期待される。

研究成果は、Springer Nature社の国際科学誌「NPG Asia Materials」に公開された。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)