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光を一方向に進む表面波に変える人工ナノ構造の実証

September, 29, 2021, 福岡/東京--九州大学先導物質化学研究所の斉藤光准教授、東京工業大学物質理工学院材料系の三宮工准教授、同大学理学院物理学系の森竹勇斗助教らの研究グループは、光の伝播を自在に操るために欠かせないダイオードのような整流作用のあるナノ光学デバイスを実証した。
 その動作原理は、2016年のノーベル物理学賞でも有名な「トポロジカル絶縁体とも関係が深く、電気伝導について物質内部は絶縁体であるにもかかわらずエッジ(表面や境界)だけ導体というトポロジカル絶縁体の不思議な性質を利用している。この性質が光伝播においても発現するような人工ナノ構造を設計し、その光伝播を直接可視化したのが今回の研究成果。
 トポロジカル絶縁体は原子が規則正しく並んだ結晶であるが、今回、原子の結晶を模した構造として、金属ナノ構造を規則正しく並べた人工結晶を作製し、光に対する「絶縁体」の機能が発現するようにした。作製した人工結晶は非対称な形をしており、これがトポロジカルな性質が発現するための重要な構造的特徴となっている。この非対称な人工結晶とそれを反転させたもう一つの人工結晶を接続して境界(エッジ)を形成すると、その境界上でのみ光伝播が発現し、境界に沿って一方向に伝播する整流性を獲得する。この人工構造は金属で構成されており、光は金属表面の自由電子集団の粗密波(表面プラズモン)に変換され、ナノスケールに圧縮されて伝搬する。
 研究グループは世界に先駆けてこのトポロジカルに保護された光伝搬をナノスケールで実現し、電子顕微鏡によってその伝播を直接可視化することに成功した。
 研究成果は2021年7月27日にNano Letters誌(2020 Impact Factor11.189)に公開された。
(詳細は、https://www.titech.ac.jp)