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NISTレーザ‘Comb’システム、空気中の全グリーンハウスガスを計測

July, 15, 2021, Gaithersburg--NISTの研究チームは、レーザ周波数コム装置をアップグレードして、3種の空中グリーンハウスガス、亜酸化窒素、二酸化炭素と水蒸気、それに主要な空気汚染物質、オゾンと一酸化炭素を同時計測できるようにした。

メタンを計測する同システムの初期バージョンと統合することで、NISTのデュアルコム技術は、4つの主要グリーンハウスガスを検知できる。気候変動に関与するこれらの温室効果ガス放出の把握とモニタリングに役立つ。最新のコムシステムは、都市の空気品質評価にも役立てられる。

NISTの装置は、特別に調整されたビームが空気を透過するパスをトレースすると、幅広いレーザスペクトルの各色で吸収された光の量を精密計測することでガスシグネチャを特定する。現在のアプリケーションは、石油とガスインストレーションからの漏出および家畜からの放出の計測を含む。コムシステムは、特定の箇所で空気をサンプリングするだけの従来のセンサと比較して多数のガスを計測できる。コムは、他の光源を使う類似技術と比べて、高精度、長距離計測が可能である。

NISTの最新の論文は、近赤外から分析された光スペクトルを中赤外にシフトし、より多くの、多様なガスを特定できるようにしている。旧来の近赤外コムシステムは、二酸化炭素とメタンを特定できるが、亜酸化窒素、オゾン、一酸化炭素は特定できない。

研究チームは、600mと2kmの長さの往復パスで、その新システムを実証した。2つの周波数コムからの光は、光ファイバに統合されて、コロラド州ボールダーのNISTビル上にある望遠鏡から伝送される。1つのビームは、別のビルのバルコニーに設置されたリフレクタに送られ、第二ビームは丘のリフレクタに送られる。コムの光はリフレクタから跳ね返り、分析のために元の場所に戻され、空気中のガスを特定する。

周波数コムは、光の正確な色を計測する非常に精密な「尺度」である。各コムの「歯」が、異なる色を特定する。スペクトルの中赤外部分に達するために、主要コンポーネントは特別に設計された結晶材料、周期的分極反転リチウムナイオベート(PPLN)である。これが、2つの波長間で光を変換する。この実験のシステムは、1つのコムからの近赤外光を2つのブランチに分け、次に、結晶内のブランチに再結合する。これが、低い周波数(より長い波長)で中赤外光を生成する。これは、二つのブランチにおける元の色の差である。

システムは、計測されたガス全ての耐久濃度の変動を捉えられるだけの正確さであった、また一酸化炭素や亜酸化窒素の従来型センサからの結果とも一致した。マルチガスの同時検出の主要な利点は、それらの相関を計測できることである。例えば、二酸化炭素と亜酸化窒素の計測された比率は、交通からの排出に関する他の研究に一致した。加えて、二酸化炭素に対する過剰な一酸化炭素の比率は、同様の都市の調査に一致するが、米国NEIによる予測の約1/3に過ぎなかった。これらのレベルは、自動車など放出源における燃料燃焼が非常に効率的であるという評価を示している。

NISTの計測は、NEIの予測よりも空気中の一酸化炭素が少ないことを示唆する他の研究を反映しており、ボールダー-デンバー地域における汚染物質のレファランスレベル、つまり「インベントリ」について初の確かな数字を示している。

論文の筆頭著者、Kevin Cosselは、「NEIとの比較は、インベントリーがいかに難しいかを示している。特に大きなエリアをカバーする場合である。また、インベントリーにデータをフィードバックすることが極めて重要であることを示している」と話している。「これは、日々の生活で、ほとんどの人には直接影響を与えるようなものではない。インベントリーは、実際に起こっていることを置き換えようとしているだけだ。しかし、空気品質や汚染の影響の把握と予測には、モデラーは、インベントリーに依存しているので、インベントリーが正確であることは極めて重要である」。

研究チームは、新しいコム装置のさらなる改善を計画している。すでに近赤外システムで示したように、距離を拡大する計画である。また、光パワーと他の微調整を改善することで検出感度を高め、追加のガスの検出も可能にする予定である。最後に、そのシステムをよりコンパクト、ロバストにすることに取り組んでいる。これらの進歩は、空気品質の把握改善に貢献する。特に、オゾン形成に影響を与える要素との相互作用である。
(詳細は、https://www.nist.gov)